【テニス】錦織圭がウインブルドンで確認した「トップ10」より大事なもの (3ページ目)

  • 内田暁●文 text by Uchida Akatsuki
  • 神仁司●写真 photo by Ko Hitoshi

 このミスショットが、懸命に食らいついていた錦織を振り落とす決定打となる。ベストに程遠い状態ながらも地力を発揮して最後まで競ったが、6−3、2−6、7−6、1−6、4−6の惜敗。

「自分のランキングも実力も上がってきている中で、もう少し勝ち上がりたかった」

 昨年と同じ3回戦進出ながら、今大会の第12シードは、その地位を守れず終わったウインブルドンを悔やんだ。

 6月24日発表の最新ランキングで記録した錦織のランキングは、10位に限りなく肉薄する11位。この数字は、5〜6月のクレーコートシーズンで残した好成績の結実である。昨年の同時期にはケガでコートを離れたが、今年は過酷な赤土の季節を戦いきり、全仏オープンでは初の16強入りを残した。だが、そのことがクレーから芝への入りを遅くし、異なるサーフェスへの移行を困難なものにした。

 ストロークなどの技術面はわずか2週間で急速に適応したものの、肉体はまだ追いついていなかった。フィジカルが最大の課題なのは、錦織本人も、スタッフも重々承知の上。ウインブルドンを終えた錦織のトレーナーは、次なるビジョンをこう語った。

「1月からのアライメント(姿勢)修正も良くなってきている。パフォーマンスが出せる身体と、それを維持できる身体作り。そして外傷や障害の発生確率を下げる身体を作ることを目指す」

 ランキングが11位まで上がったことで、性急な周囲は1日も早い「トップ10入り」を期待するが、当の錦織は、「一度入るだけでは意味がない。ここ何年かで、その位置を確立できるのが目標。よって今は、ランキングにあまり関心はない」と、一過性の数字には何の価値も見出してはいない。

 敗戦後の悔しそうな表情や口調からも明らかなように、錦織は今回の結果に当然満足していない。だが、現在のツアーシステムや錦織の肉体的なキャパシティなどすべてを含め、客観的に見てみれば、ウインブルドン3回戦惜敗というのは、恐らくは彼の現在地を正当に反映した結果なのだろう。だが、錦織の上昇志向や、1〜2回戦で見せた高いクオリティのテニス、そしてフィジカルの改善の余地を鑑(かんが)みたとき、その先に見える世界は「トップ10」という枠では計れない。

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