4カ国語を操る東大ラグビー部副将・領木彦人が振り返るまさかの敗戦「ショックのあまり、自分で自分の記憶を消しちゃったんですかね」 (3ページ目)
領木が記憶をなくすほどのショックを受けた敗戦──対抗戦Bグループの2試合目となる9月28日の成城大戦、東大は36−40で敗れた。そのショックを領木がこう続ける。
「もっとできたなって思います。目指すところは間違っていないし、準備すべきこともすべてやった。でも、できるはずのことができなかった。過信があったのかな。最初、一気に3トライを取られて相手の選手とすれ違ったとき、『楽勝じゃん』って声が聞こえてきて......それで冷静になれず、現場でプレッシャーをかけることができませんでした」
勝負はしてもいい。しかしギャンブルはすべきではない。できないことをやろうとすると、焦ってミスが出る。現場で勝負したかった東大、外に回したい成城大。ボールを回されれば回されるほど東大にはスキが生まれる。ラグビーの経験値が高くない東大の選手たちは、相手にペースをつくられると対応できない。
この負けは、ようやくチームへの手応えを感じ始めていた一聡にも計り知れないショックを与えた。一聡が受けたショックの理由はチームとしての戦術、個人としての技術ではなく、まったく別のところにあった。それは、東大にもっとも身につけさせたかった大事なことを成城大に見せつけられたから、だった。
著者プロフィール
石田雄太 (いしだゆうた)
1964年生まれ、愛知県出身。青山学院大卒業後、NHKに入局し、「サンデースポーツ」などのディレクターを努める。1992年にNHKを退職し独立。『Number』『web Sportiva』を中心とした執筆活動とともに、スポーツ番組の構成・演出も行なっている。『桑田真澄 ピッチャーズバイブル』(集英社)『イチローイズム』(集英社)『大谷翔平 野球翔年Ⅰ日本編 2013-2018』(文藝春秋)など著者多数。
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