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受験モード突入の浦和高校ラグビー部が、
桐蔭学園に完敗して得たもの (4ページ目)

  • 門脇 正法●取材・文 text by Kadowaki Masanori photo by Sportiva


 久しぶりの再会に、満面の笑みがこぼれる松永キャプテン。

 それは、前後半を合わせた60分間を全力で戦ったからこその笑顔であり、試合後は勝者も敗者もいないという、ラグビーならではの「ノーサイド」の精神を象徴するような瞬間だった。

 ところで、その桐蔭学園は試合前日に、浦高とはどんなチームなのかを分析するミーティングを行なっていたという。

 そこでキーワードになったのが、浦高に伝わる「三兎(さんと)を追え」という言葉。

 これは浦高の関根郁夫元校長が推し進めた、浦高の生徒なら「勉強」だけでなく、「部活」や「学校行事」など、「少なくとも三兎を追え」という指導方針がベースになっている。つまり、三兎のすべてに全力で取り組むことで、いかなる難題でも乗り越えていく精神力と体力を身につけ、人間として成長していってほしいという意味が、この言葉には込められているのだ。

 このような伝統から、桐蔭学園のラグビー部は、自分たちとの試合にも浦高が全力で向かってくることを理解し、その全力には全力で応えようとした。

「ウチがただの進学校ではないと、桐蔭学園さんはいろいろ調べてくれたみたいで、ここまでウチをリスペクトしてくれたことは、本当にありがたいなと。やっぱり、桐蔭学園さんの強さは、そういうところにあるんだなと思いました」

 そう語る三宅監督。

「花園で桐蔭学園さんと戦えたことは、彼らの人生にも、浦高にも、すごく大きな財産になると思います。1、2年生には勉強もラグビーも頑張ってもらいたいですね」

 今回の桐蔭学園戦を、三宅監督はそう締めくくった。

 花園を去った後も、受験に臨む3年生と、彼らの想いを受け継いだ1、2年生は、それぞれの場で「一流の文武両道」に挑戦し続けていく。それが浦高でラグビーをするということなのだから。

松永(中央)と再会を果たした桐蔭学園の渡部(右)と石塚(左)。彼らのラグビーはこれからも続く松永(中央)と再会を果たした桐蔭学園の渡部(右)と石塚(左)。彼らのラグビーはこれからも続く

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