2028年ロス五輪正式種目に決定も「どうやったら普及できるんだろう」 日本代表の近江佑璃夏が描くフラッグフットボールの未来 (3ページ目)

  • 永塚和志●text by Kaz Nagatsuka
  • 村上庄吾●photo by Murakami Shogo

【オリンピック後の青写真】

2023年のアジア・オセアニア大会で優勝するなど、同地域では日本がトップに立つ 写真/本人提供2023年のアジア・オセアニア大会で優勝するなど、同地域では日本がトップに立つ 写真/本人提供

――今回はまず2028年ロサンゼルス五輪の競技に採用されましたが、それ以降のオリンピックではまだどうなるかわかりません。そこについてはどうお考えですか?

「(ロサンゼルスでの)結果次第で日本のフラッグフットボール界全体が発展するかどうかが決まる大会になると思っています。メダルを獲ることでメディアにも取り上げていただけるだろうし、そこから発展していくだろうと考えているので、私はフラッグフットボール界にとっては最重要の大会ではないかと思います。

 フラッグはオリンピックまでも発展していくでしょうが、とはいえ結果が出なかったら発展しようにもできないというか、オリンピックで結果を出したら全国で部活も出てくるんじゃないかと思うので、私はそこが楽しみです」

――小学校の授業では採り入れているところが増えていて、オリンピック次第ではそこから先、中学高校で部活動としてやっていく可能性も出てきますね。

「今は中高の受け皿がほとんどありません。私のチームにも高校生がいるんですけど、中学にはチームがあったのに高校に上がるとなくなっちゃうという子が結構いて、うちで受け入れている状況です」

――近江選手としても競技の普及に一役買いたいというところでしょうか?

「そうですね。貢献できたらいいなと思いますし、それが自分のレベルアップにもつながるかなと思っているからです。とはいえ、どうやったら普及できるんだろうという難しい部分はありますが、今は結構、SNSの発信は頑張ろうと思ってやっています」

――ロサンゼルス五輪の出場権をかけた予選方式などはもう公表されているのでしょうか?

「まだ何も知らされていないのですが、噂では地域ごとに2カ国ずつが選ばれるんじゃないかと聞いています。計6カ国がオリンピックに出場するのですが、それは大会前年の2027年には決まっていると思います」

――アジア地域だとどこが日本のライバルになりそうですか?

「この前(2023年)、アジア・オセアニア大会というのがあって、そこでは日本が圧倒的ではあったので今の段階ではライバルと言える強豪はいません。だた、ニュージーランドやオーストラリアはラグビーが盛んな地域ですし、今後そこからの流入があるようなら、日本にとっての強豪になってくると考えられます。あとは中国も動向次第ではライバルになるかと」

――近江選手としては今後、フラッグフットボールの選手、またひとりの人間としてどのようなところを目標として活動していきたいとお考えですか?

「世界一のレシーバーになりたいという思いもありますが、次に行なわれる中国でのワールドゲームズから1チームの人数が10人(現状は12人)になるので、(オフェンスとディフェンスの)両方ができる人が選ばれることになります。ですから世界一のレシーバーだけを目指していても選ばれない可能性もあるので、フットボーラーとして世界一を目指していきたいと思います。

 また、私はフラッグ歴が長いほうなので、新しく入ってくるメンバーなどの支えにもなっていきたいし、キャプテンのような立ち位置でオリンピックには臨みたいと思っています」

――フラッグフットボールの選手としては、永遠にプレーできるものではないと思います。人生設計のようなものは描いているのでしょうか?

「今は本当にオリンピックが目標で、その後はまだ考えていません。ただ人生を通して、選手という形ではないにしてもフットボールの発展には携わっていきたいなとは思っています」

【Profile】近江佑璃夏(おうみ・ゆりか)/1999年、大阪府大阪市生まれ。元社会人チームでプレーした父や、社会人Xリーグ・IBMビッグブルーに所属するプロ選手の兄・近江克仁を持つ「アメリカンフットボール一家」に育ち、さまざまなスポーツを経験しながら立命館大学では応援団チアリーディング部に所属していたが、カナダ留学中に本格的にフラッグフットボールを開始。現在、自身が代表を務めるチーム「Blue Roses(ブルーローゼス)」や日本代表で活動。2023年のアジア・オセアニア選手権に出場し優勝メンバーとなった。一般企業の営業職社員としてフルタイムで勤務に当たっている。

著者プロフィール

  • 永塚和志

    永塚和志 (ながつか・かずし)

    スポーツライター。前英字紙ジャパンタイムズスポーツ記者。Bリーグ、男女日本代表を主にカバーし、2006年世界選手権、2019W杯等国際大会、また米NCAAトーナメントも取材。他競技ではWBCやNFLスーパーボウル等の国際大会の取材経験もある。著書に「''近代フットボールの父'' チャック・ミルズが紡いだ糸」(ベースボール・マガジン社)があり、東京五輪で日本女子バスケ代表を銀メダルに導いたトム・ホーバスHC著「ウイニングメンタリティー コーチングとは信じること」、川崎ブレイブサンダース・篠山竜青選手 著「日々、努力。」(ともにベースボール・マガジン社)等の取材構成にも関わっている。

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