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鳥内秀晃が日本スポーツ界の病理を斬る。「鉄拳制裁、パワハラ、そんなのスポーツやない」 (2ページ目)

  • 中村計●取材・文 text by Nakamura Kei
  • photo by Sankei Visual

【上手い・下手に関しては、何も言わへん】

―― 鳥内さんはコーチ時代と監督時代を合わせると、計34年間、関学大アメフト部の指導に携わってきたことになります。自ら考えさせる指導法にシフトしはじめたのはいつ頃だったのでしょうか。

鳥内 監督になって4、5年経った頃かな。何人ものスタッフを雇えるような環境ならまだしも、大学スポーツにそこまでの余裕はない。その中で、100人前後の選手を手取り足取り指導するのは不可能。なので、3、4年生は全員、選手兼コーチにすることを思いついた。僕はほとんど何も教えない。そうすると、勝つために3、4年生は必死になって1、2年生を指導するようになる。下級生に納得してやらせるには上級生は理論武装しなければなりませんから、自然と思考も深まる。スタッフの前で、こういう方針で指導したいとプレゼンする選手も出てくる。せやから、うちのOBは社会人になっても臆せずものが言えるんです。

―― 鳥内さんが監督をしていた頃、全体練習の時間はどれくらいだったのですか。

鳥内 全体でやるのは1時間から1時間半くらいやないですか。それも全体というより、ユニットごとです。あとは個人練習でしたね。ウィークポイントはそれぞれ違うわけですから。できることやっても、しゃあない。(練習時間が)長い選手でも、うちの場合は、計3、4時間くらいだったと思います。春キャンプのトレーニングはかなりハードやけど、いわゆるハードなクラブとはちゃうと思います。

―― 鳥内さんは練習中、ほとんど何も言わないのですか。

鳥内 アメフトは安全第一。なので、危ないプレーは見逃さずに指摘する。ケガはやられたほうも、やったほうも、傷を負いますから。僕が現役の頃は、「あいつを練習で潰せば自分が試合に出られる」と考える選手もおりました。でも、部員の最優先事項は、チームが勝つことやで、と。だから、チームにとってマイナスになることは絶対に許しません。

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