【NBA】河村勇輝が新天地で順調スタート ガード陣の層が厚いブルズで存在感をアピールできるか? (2ページ目)
【守備でのサイズ不足をどこで埋め合わせるか】
もっとも、NBAへの定着を目指すと考えたとき、河村にはまだ明白な改善点が残っているのも事実である。自身はロングジャンパー(ジャンプショット)、ゴール周辺でのフィニッシュ力の向上を最大のポイントとして挙げていたが、それと同時にキャバリアーズとのプレシーズンゲームでは、やはりディフェンスが課題に感じられた。
4ファウルを犯しながらも(NBAは6ファウルで退場)積極的に相手にプレッシャーをかけていったが、自身の頭上からジャンパーを決められてしまうシーンが見受けられた。身長173cmとNBAでは並外れた小兵であれば仕方ない部分とも言えるのだが、ポジショニング、フィジカルに磨きをかけ、この点を埋め合わせることができるのか。あるいはディフェンスの難しさによるマイナスを上回るほどのインパクトを、それ以外の面で生み出せるのか。河村の今後を占ううえで、この2点は焦点になってくる。
ブルズはガード陣に陣容が偏っていることは盛んに伝えられており、聡明な河村はもちろんそんな容易な状況を理解している。
「僕はチームを選べるようなレベルの選手ではないというのもあります。その意味で、しっかりと評価してくれたブルズに行くことが何より一番自分にとっていい選択だなと思ったんです。PG(ポイントガード)が多い現状はもちろんあり、簡単ではないですが、そのおかげで練習や試合のなかでもいろんなことを学べます。多くのことを吸収し、成長できればいいなと思っています」
シーズン中には必ず故障者は出るもので、移籍する選手や解雇者も出てくる。長い1年のなかで、河村に声がかかる機会や時期はあるはず。たとえガードが多くとも、プレーオフを目指して"Win Now" (直近で優勝を目指す)モードだった昨シーズンのメンフィス・グリズリーズと比べ、ブルズは現段階の河村に適したチームであるように感じられる。
もっとも、再建状態だからといって河村をじっくり育ててくれる環境とはもちろん限らない。サマーリーグでの活躍で2ウェイ契約を得たあとでも、背番号8にとって"明日なき日々"は続いていくのだろう。
「常に緊張感を持っています。もちろん保証もないですし、いつカットされるかもわからないという状況です。本当に1日1日、後悔なく、もしかしたら今日が最後の日かもしれないという気持ちを持って、毎日過ごすべきだと思っています。
1日1日、証明し続けなければいけないと思うので、そこの緊張感は常にあります」
NBAで活躍する選手は1〜2年目に大きく成長するケースが多く、今季は河村への見方も1年目よりは厳しくなる。アメリカが舞台の壮大なサバイバルレースのなかで、2年目にどんな成長度を見せてくれるのか。常に未来をしっかりと見据える日本のファンタジスタが、危機感と緊張感を糧にし、少しでも確実に前に進んでいってくれることを期待したいところだ。
著者プロフィール
杉浦大介 (すぎうら・だいすけ)
すぎうら・だいすけ 東京都生まれ。高校球児からアマチュアボクサーを経て大学卒業と同時に渡米。ニューヨークでフリーライターになる。現在はNBA、MLB、NFL、ボクシングなどを中心に精力的に取材活動を行なう
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