河村勇輝が経験した「バスケットをやってきたなかでワーストゲーム」 Gリーグ終盤で生まれた葛藤とその真意 (2ページ目)
【「そうやって思ってしまった自分がすごく嫌になりました」】
Gリーグのシーズン終盤、河村は環境の変化や状態に葛藤を抱えていたという photo by Miyaji Yoko
NBAに挑むためにアメリカに出てきて5カ月。予定より早く2ウェイ契約を獲得し、周囲が思っていたより早く環境に適応している河村だが、長いシーズンのなかには、うまくいかないときも何度もあった。そのたびに「こういう経験をするためにアメリカに出てきたのだから」と自分に言い聞かせて気持ちを切り替え、壁を乗り越えるための努力をしてきた。
常に前向きで、強いメンタルで挑んでいるように見えるが、そんな彼でも落ち込むときはある。「ワーストゲーム」をしたあとも、少し弱気になった自分がいた。
「もちろん落ち込みます。ここ最近はGリーグでもなかなかリズムをつかむことができませんでしたし、自分の強みであるポイントガード、"ザ・ポイントガード"っていう役割を与えてもらってなかったんで、すごく落ち込んでいたというか、なかなかうまくいかないなぁと思うこともあった」と明かした。
エージェントからは、NBAチームに売り込むためにもスタッツを残すことが重要だと言われているのだが、ボールを持つ時間が少ないと、それも難しい。一方で、遠征も含めて次々と試合をこなすスケジュールをこなし、身体には負担がかかっていた。肩に始まり、ハムストリングス(太もも裏の筋肉)や大腿四頭筋(太もも前の筋肉)など、身体のあちこちに小さなケガを抱え、ケアしながら試合に出続けている状態だった。
それだけに、スタッツを出せる状態でないのなら、いっそのこと試合を休んだほうがいいのではないか。頭のなかで、そんな思いもよぎったという。
「トレーナーからは無理しなくていいと言われてもいました。正直、今日(「ワーストゲーム」の2日後、3月27日のスパーズ戦)だって、休む理由を作ろうと思えば休める状況ではあって、ちょっと葛藤しました。
今はボールをなかなか持たせてくれないから、(思うような)スタッツがなかなか出ないのはもう目に見えている。でも、それで試合を休むというのは、僕の気持ち的になんかありえないなって。 そうやって(休んだほうがいいかもしれないと)思ってしまった自分がすごく嫌になりました。なんでこんなことを考えているんだろうって。
チームが勝つことが何より大事で、自分が成長したいと思ってここに来たのに、ビジネスというか、スタッツのことばっかり考えて、試合に出ないというのは気持ち悪いというか、なんかすっきりしないなというふうに思ったんで、一瞬でその気持ちはなくなりましたけど」
これも、自ら求めて飛び込んできた厳しい環境だ。
「日本にいたらなかなか経験できないことばかりです。あまりこういうことは言いたくないですけど、今、日本に帰ってプレーしたら、自分がファーストオプションで、ボールを持って自分のなかでリズムを作れる。でも、自分がアメリカに来た理由は日本で経験できないようなことを、アメリカの高いレベルで経験して、それを乗り越えていくことに意味があるっていうふうに思っているんで。
もちろん、時間はかかるかもしれませんし、今後どうなっていくかわかりませんけど、今、自分のなかで満足していない難しい状況のなかでプレーできることは、逆に、自分が成長できるいい機会なんじゃないかなと思います。(気持ちを)そっちにしっかりシフトして、毎日、ワークハードしていければいいなと思っています」
2 / 3