NBAでプレー&指導実績 バスケ女子日本代表ゲインズHCが目指す「オーガナイズド・カオス」とは (4ページ目)
【みんな日本を応援していた】
── 東京オリンピック後にホーバスHCに呼ばれ、2023年のFIBAワールドカップや2024年のパリオリンピックを一緒に戦いました。男子代表での時間をどう振り返りますか?
「とても貴重な学びの時間でした。なぜなら、私にとって男子も女子も関係なく、日本のバスケットボールを強くしたいという思いが強いからです。
ニューヨーク・ニックスでコーチをしていた2016年、私はアメリカでリオオリンピックを見ていました。女子の日本代表vsアメリカ代表が行なわれる日、私はUCLAでデリック・ローズ(2011年シカゴ・ブルズ時代に最年少シーズンMVP受賞)とヨアキム・ノア(2014年ブルズ時代に最優秀守備選手賞受賞)のワークアウトを手伝っている最中でしたが、その試合を見たかったので帰宅することにしたのです。
帰宅途中にあるサンタモニカの店でテレビ観戦することにしたのですが、試合が始まってしばらくすると、店内のアメリカ人は日本を応援し始めたんです。アメリカで、ですよ? 後日、私は興奮気味にホーバスHC(当時・女子日本代表AC)に伝えましたよ。『みんな、日本を応援していたぞ』って。
あまりに驚いたので、となりにいた人に『なぜ日本を応援しているの?』と聞いたら、『応援せずにはいられないよ。彼女たちはアメリカ人に比べてずっと小さいのに、精一杯戦っている。プレースタイルもいい。常にアタックし、すべてを出しきっている』と。彼らは日本チームの虜(とりこ)になっていたのです。
日本が再び世界からそう見てもらえることを、私は願っています。ですから今回、女子代表HCという栄誉にあずかったことは、本当にうれしいのです」
── 就任会見で「どのようなバスケットボールを展開するのか」と問われて、「オーガナイズド・カオス」と表現されていました。
「バスケットボールの試合では、決められた動きに沿ってプレーを実行する『セットプレー』というものがあります。決められた動きですから、何度やっても同じようにできなければいけません。ただ、試合では相手がいるので、こちらの決まった動きに対して邪魔をしてきます。
たとえば、ある人が毎日10時10分にコーヒーショップへ行き、10時12分に店を出て、10時15分に会社に到着するとします。仕事が終わって17時25分に退社し、いつも同じバーに19時10分に立ち寄って、家に着くのは21時半。その人にとって、それこそが『オーガナイズド』。そのように行動が決まっている人の邪魔をすることは簡単なことです。なぜなら、その人物の行動が全部わかっているから。
なので、その人が10時10分ではなく10時5分にコーヒーショップへ行って、会社には10時10分に着いたとしましょう。いつもと同じ行動ではあるけれど、同じ時間ではない。それこそが、相手にとって『オーガナイズド』であり『カオス』であるということです。カオスとは『予測ができないこと』を意味しています」
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