NBAでプレー&指導実績 バスケ女子日本代表ゲインズHCが目指す「オーガナイズド・カオス」とは (2ページ目)
【イエスマンは必要としていない】
── それは画期的な手法ですね。
「アメリカにやってきた彼女たちは、それほど多くの指導者に接したことがありませんでした。しかし、日本のバスケットボールを変えるならば、異なる手法に触れなければなりません。
私が在籍していたマーキュリーでは、ポール・ウェストヘッドHC(ゲインズHCがプレーしたロヨラ・メリーマウント大、ロサンゼルス・レイカーズ、日本リーグ・松下電器スーパーカンガルーズ等HC)が3Pを多用する積極的なオフェンススタイルを敷いて、当時のWNBAでも特異な目で見られていました。それを日本の選手たちに見てもらったのです。
ホーバスHCとは日本での選手時代から知り合いでしたし、私の指揮するマーキュリーでもACを務めてもらいました。昔から彼とのつながりが強かったので、日本バスケットボール界との関係性を深めていったのです」
── ゲインズHCは男子日本代表のアソシエイトHCという立場ながら女子代表のHCも引き受けるという、少し特殊な状況で就任されます。正式な話が持ちかけられた時は、ふたつ返事で受けられたのですか?
「もちろんです。東京オリンピックを見て、女子日本代表が銀メダルを獲った印象は強く残っています。あの時のように、日本を強いチームにしたいと思いました。強化をすれば世界の表舞台に戻ることができると思っています。就任会見(2月3日)でも申しましたが、世界のスタンダードを取り戻すことが大事なのです」
── トム・ホーバスHCとは長年の友人で、男子代表では彼の「右腕」を務めてきました。ゲインズHCとホーバスHCは、コーチとしての考え方が似通っているのでしょうか? あるいはまったく違うものなのでしょうか?
「いい質問です。実際に私と彼が何かを話し合う時、10回のうち9回は意見がぶつかり合います。ただ、それこそがホーバスHCが求めていること。彼が意見を求めた時に、『それはいいですね。そうしましょう』というイエスマンは必要としていないのです。
だから私は、彼にアイデアを提案します。もちろん彼がHCですので、最終的な決断は彼が下すのですが。男子代表での私の役割は、彼にアイデアと、時に彼の考えが及ばないようなものを提示し、チームが強くなるように貢献することでした」
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