バスケ女子日本代表ゲインズHCの指導の基軸 「いいコミュニケーター」であるためにすべきこと
バスケットボール女子日本代表
コーリー・ゲインズHCインタビュー(後編)
◆コーリー・ゲインズHC前編>>目指す「オーガナイズド・カオス」とは?
トム・ホーバスHC(ヘッドコーチ)の「右腕」として男子日本代表を支えてきたコーリー・ゲインズ氏が、女子日本代表を率いることになった。インタビュー前編では、長年の友人でもあるホーバスHCとのコーチングの相違点や、女子日本代表への想いを語ってくれた。
インタビュー後編では、具体的な強化のビジョンについて話を聞く。新しい選手の発掘やコミュニケーション方法など、ゲインズHCが培ってきた指導スタイルとは──。
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ゲインズHCはどんな手法で女子日本代表を強くするのか photo by Kai Keijiroこの記事に関連する写真を見る── 女子日本代表を強くするキーワードとして用いた「オーガナイズド・カオス」という単語は、ゲインズHCの師匠であるポール・ウェストヘッド氏が用いていた言葉だそうですね。
「そのとおりです。彼が最初に『ラン・アンド・ガン』と呼ばれるシステムを考案した時、周囲は『クレイジーだ』と言っていました。しかし今、そのバスケットボールは誰もがやっていることです。私は大学時代にウェストヘッドHCの下でプレーし、のちにWNBAフェニックス・マーキュリーでAC(アシスタントコーチ)も務めたので、彼から多くの影響を受けました。
ウェストヘッドだけでなく、パット・ライリー(HCとしてレイカーズとマイアミ・ヒートで計5度のNBA王座獲得)やジェフ・ヴァン・ガンディ(ニューヨーク・ニックスとヒューストン・ロケッツでHC)、ジョージ・カール、バーニー・ビッカースタッフ、ドウェイン・ケイシーなど、多くの優れたコーチたちの下で指導を学んできました。彼らから教わったことに少しずつ改良を加えながら、自分のオリジナルを昇華させたわけです。今の私があるのは、こうしたコーチたちのおかげです」
── これから女子日本代表を作っていくにあたって、新たな若手の起用についてはどう考えていますか?
「ベテランと若手をうまく組み入れていくことが大事だと思っています。アメリカの大学バスケットボールも昔は、選手が4年間プレーをすることは普通で、チーム内に4年生が4〜6人ほどいるのも当たり前でした。しかし時代は変わって、4年生はゼロ、3年生がふたり、2年生がひとり、あとは全員1年生......というところも今は少なくありません。
制度の変更などもあって、優れた選手たちはすぐにNBAへ行ってしまうか、ほかの学校に転校してしまうからです。『大学バスケットボールが台無しになってしまった』と嘆く人もいます。ベテランが少なく、チームとしての安定感を失ってしまっているからです」
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著者プロフィール
永塚和志 (ながつか・かずし)
スポーツライター。前英字紙ジャパンタイムズスポーツ記者。
Bリーグ、男女日本代表を主にカバーし、2006年世界選手権、 2019W杯等国際大会、また米NCAAトーナメントも取材。 他競技ではWBCやNFLスーパーボウル等の国際大会の取材経験 もある。著書に「''近代フットボールの父'' チャック・ミルズが紡いだ糸」(ベースボール・マガジン社) があり、東京五輪で日本女子バスケ代表を銀メダルに導いたトム・ ホーバスHC著「ウイニングメンタリティー コーチングとは信じること」、川崎ブレイブサンダース・ 篠山竜青選手 著「日々、努力。」(ともにベースボール・マガジン社) 等の取材構成にも関わっている。