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サッカー日本代表が大勝したインドネシア戦 際立ったデータを残した新戦力がいる

  • 中山 淳●文 text by Nakayama Atsushi

「勝ったことはもちろんですが、常に選手たちが積極的に、アグレッシブにゴールに向かって行くプレーを見せてくれました。局面局面で、激しく、厳しく、粘り強くというところも出して、勝利につなげてくれたと思っています」

 試合後の記者会見でそう語ったのは森保一監督だった。

インドネシア戦で1ゴール2アシストの活躍だった町野修斗 photo by Ushijima Hisatoインドネシア戦で1ゴール2アシストの活躍だった町野修斗 photo by Ushijima Hisatoこの記事に関連する写真を見る 今予選初の黒星を喫したオーストラリア戦から中4日。日本は最終節でインドネシアをホームに迎え、6-0で圧勝した。新しいメンバーを多数招集し、W杯本番に向けて選手層に厚みを持たせることを今シリーズの主な目的としていただけに、指揮官が満足そうに試合を振り返るのも当然と言えるだろう。

 一方、第7節からインドネシアを率いるパトリック・クライファート監督は「最初の数分はよかったが、昨日(試合前日)の会見でも話したように、日本は絶対的に質が高いチームで、個人としても集団としてもW杯レベル。結果は残念なものになったが、監督としての私も含めてこういう試合から我々は学ぶ必要がる」と完敗を認め、すでに出場を決めている10月のアジア4次予選(プレーオフ)を見据えていた。

【思いどおりに敵陣に前進】

 この試合を振り返ってみると、確かにクライファート監督が語ったように、インドネシアが日本に食い下がったのは試合開始から10分程度に限られ、11分に町野修斗がヘディングシュートを放ってからは、日本が一方的に攻撃を仕掛け続ける展開が続いた。

 インドネシアの布陣は5-4-1。基本的には、前節で日本に勝利したオーストラリアと同様の陣形で日本の攻撃を封じにかかったが、個々のプレーの質やチームとしての組織力は、オーストラリアのそれとは大きく異なっていた。4次予選出場を確定させていたことも影響したのかもしれないが、それを差し引いたとしても、この日のインドネシアには集中力を欠いたプレーが散見され、守備組織は壊滅的だった。

 たとえば、オーストラリアは日本のボランチを経由するビルドアップを封じるべく、5人で日本のダブルボランチを囲み、徹底的に中央を絞って縦パスを通させなかった。しかしこの日のインドネシアの場合、5-4-1は単なるかたちだけのもので、日本のビルドアップをどのようにして封じるかといった具体策を整理できていないように見えた。

 実際、1トップの10番はアリバイ的な守備しか行なわず、2列目の4人も横に並んで網を張っただけ。それにより、この試合で日本のボランチを務めた遠藤航と佐野海舟は序盤から自由にボールを受けてビルドアップに参加し、中央と左右両サイドを使い分けながら、ほぼ思いどおりに敵陣に前進することができた。

 日本のビルドアップで特徴的だったのは、遠藤が最終ラインに下りて4バックを形成し、佐野(海)が前に出て4-3-3の陣形に変化するシーンが時折見られたことだった。これは昨年10月15日のオーストラリア戦で見せたかたちと同じで、そのひと工夫だけでインドネシアの前線からの圧力を回避することに成功。佐野(海)は、相手10番の前後左右を自由に動いてボールを受けられた。

 もっとも、日本が4バックを形成しなくても、日本が前進に苦労することはなかった。インドネシアの2列目の「4」は統率が取れておらず、日本が縦パスを通すのに十分な隙間もあったからだ。インドネシアには前半のうちにふたりの負傷交代を強いられる不運が重なったにせよ、そういった点だけで見ても、日本の勝利はロジカルだった。

 特に、日本は相手の初歩的なミスを見逃さず、早い時間帯に2ゴールを挙げたのが大きかった。最終的に、代表キャップ数の少ない選手が多く出場したなかで6ゴールを奪ったうえ、相手にシュートを1本も打たせずにクリーンシートで勝利したことは、今後に向けてポジティブな材料になっただろう。

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著者プロフィール

  • 中山 淳

    中山 淳 (なかやま・あつし)

    1970年生まれ、山梨県出身。月刊「ワールドサッカーグラフィック」誌編集部勤務、同誌編集長を経て独立。スポーツ関連の出版物やデジタルコンテンツの企画制作を行なうほか、サッカーおよびスポーツメディアに執筆。サッカー中継の解説、サッカー関連番組にも出演する。近著『Jリーグを使ってみませんか? 地域に笑顔を増やす驚きの活動例』(ベースボール・マガジン社)

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