パリ五輪バスケ・アメリカ代表はレブロン、デュラントだけじゃない! 豪華メンバーの裏に隠されたチーム編成の狙い (3ページ目)

  • 宮地陽子●取材・文 text by Miyaji Yoko

【世界で勝つための個の力と対応力】

 このふたりとカリー、エンビードの4人でNBAのMVPを8回受賞しているのだから、その4人が代表入りしたことだけでもすごいことなのだが、ほかのメンバーも全員がNBAのオールスター級ばかり。弱点だったビッグマンも、エンビード(213cm)に加えてアンソニー・デイビス(レイカーズ、208cm)、バム・アデバヨ(マイアミ・ヒート、206cm)とNBAを代表する、ディフェンス力も備えたビッグマンが3人揃い、世界のさまざまなビッグマンと戦うための戦力が揃った。

 ヒルも、「これだけのビッグマンが揃ったのは久しぶりだ。私がプレーした1996年(アトランタ五輪)でアキーム・オラジュワン、デイビッド・ロビンソン、シャキール・オニールがいたとき以来かもしれない」と満足そうに語った。

 残りのメンバーはカワイ・レナード(ロサンゼルス・クリッパーズ)、ジェイソン・テイタム(ボストン・セルティックス)、デビン・ブッカー(サンズ)、ドリュー・ホリデー(セルティックス)、タイリース・ハリバートン(インディアナ・ペイサーズ)、アンソニー・エドワーズ(ミネソタ・ティンバーウルブズ)。

 22歳(エドワーズ)から39歳(ジェームズ)まで世代を超えた12人で、殿堂入り確実なベテラン選手から、この先のNBAの顔となりそうな若手まで揃っており、1992年の元祖『ドリームチーム』にも勝るとも劣らない豪華メンバーだ。と同時に、『リディームチーム』の時のように、チームとしてのケミストリーも意識したメンバー選出にもなっている。

 世界の各国が力をつけてきているなかで、個々の選手の実力とチーム力の両輪が揃わないと対抗できないからだ。地元フランスをはじめ、カナダ、ドイツ、オーストラリア、セルビアといった国々が、アメリカを倒そうと戦いを挑んでくることは間違いない。

 ヒルはメンバー選出で意識したこととして、サイズ、国際大会での経験、そしてすべてのポジションにおけるディフェンスをあげた。

「対戦相手のことも理解しなくてはいけない。さまざまなスタイルの国があるなかで、私たちも、どんなスタイルを相手にしても戦えるようなロスターを組んだ。必要だと思っていたことはすべて網羅できたチームだと思っている」と胸を張った。

 目標は金メダル。ヒルも「最終的には金メダルこそが、私たちを評価するためのスタンダードだ」と断言する。それだけ、常勝を求められてきたのがオリンピックでのアメリカ代表であり、それは今回も変わりない。

 アメリカ代表は、NBAシーズン終了後の7月上旬にラスベガスに集結。トレーニングキャンプと強化試合を経て、パリ五輪での5大会連続金メダルに挑む。

プロフィール

  • 宮地陽子

    宮地陽子 (みやじ・ようこ)

    スポーツライター。東京都出身。アメリカを拠点にNBA取材歴30年余。アメリカで活動する日本人選手やバスケットボール国際大会も取材。著書に『The Man〜 マイケル・ジョーダン・ストーリー完結編』(日本文化出版)、編書に田臥勇太著『Never Too Late 今からでも遅くない』(日本文化出版)、2023年1月発売の共著に『スラムダンク奨学生インタビュー その先の世界へ』(集英社)。

3 / 3

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る