高校・大学も強豪校ではなく自身もほぼ無名の存在から...今村佳太という「新しいエース」が琉球ゴールデンキングスをBリーグ優勝に導いた (3ページ目)

  • 永塚和志●取材・文・写真 text&photo by Kaz Nagatsuka

 あらためて、エースとしての自覚、覚悟はいつから固まったのかと問うと、今村はこのように答えた。

「誰よりも勝ちたいという気持ちがあるのは自分だと思っていますが、"エース"は言葉でしかなくて、チームメートが僕に任せてくれたり、スタッフが最後の場面でボールを渡す指示をしてくれたり、そういうものの積み重ねが結果的に今(そう呼ばれるようになっていること)につながっていると思います。(去年のファイナルで)負けたというのが自分の中では本当に大きくて、今シーズンは絶対に自分が優勝に導くというのは最初から決めていたので、そこから覚悟を決めました」

 琉球在籍4年目で今シーズン、チームのトップスコアラー(16.4点)となったジャック・クーリーはファイナル終了後、今村についてこのように話している。

「これはいろんな取材でも言ってきたことなんだけど、僕は佳太がベストな日本人選手だと思っているし、彼とプレーができてとても恵まれていると感じているよ。彼のディフェンス力と得点能力に比肩する選手は、このリーグに多くない。だから僕は彼が『エース』だって呼ばれることには何も問題はないよ」

 今村らガード陣が速攻時などに躊躇なく3Pを打ち、勇気を持ってドライブすることができるのはこのビッグマンの存在も大きいと感じた。

「今、プレーしていて、自分がチームを優勝に導ける選手だなという自信もありますし、それだけのシーズンを送ってきたと思っています」

 横浜ビー・コルセアーズとのセミファイナルを制した後、今村はケレン味のない口調でそう語った。

 高校も大学も強豪校にいたわけでもなく、自身も無名に近い存在だった。

そんな男が、前年の悔しさを成長への糧として日本一のチームの"エース"となった。

プロフィール

  • 永塚和志

    永塚和志 (ながつか・かずし)

    スポーツライター。前英字紙ジャパンタイムズスポーツ記者。Bリーグ、男女日本代表を主にカバーし、2006年世界選手権、2019W杯等国際大会、また米NCAAトーナメントも取材。他競技ではWBCやNFLスーパーボウル等の国際大会の取材経験もある。著書に「''近代フットボールの父'' チャック・ミルズが紡いだ糸」(ベースボール・マガジン社)があり、東京五輪で日本女子バスケ代表を銀メダルに導いたトム・ホーバスHC著「ウイニングメンタリティー コーチングとは信じること」、川崎ブレイブサンダース・篠山竜青選手 著「日々、努力。」(ともにベースボール・マガジン社)等の取材構成にも関わっている。

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