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高校・大学も強豪校ではなく自身もほぼ無名の存在から...今村佳太という「新しいエース」が琉球ゴールデンキングスをBリーグ優勝に導いた (2ページ目)

  • 永塚和志●取材・文・写真 text&photo by Kaz Nagatsuka

 今回のチャンピオンシップでも、今村が真にチームの中心になったことを明確に示す場面が幾度かあった。クォーターファイナルの名古屋ダイヤモンドドルフィンズとの初戦では、試合時間残り30秒強に1対1からレッグスルーからの3Pをねじ込み勝利を手繰り寄せた。ファイナル第1戦では2度目の延長で3P、ドライブインからのフローター、レイアップを決めた。まさにエースたるプレーぶりだった。ファイナル初戦を96-93で勝利を収めたあと、今村はこのように語っている。

「試合をとおして、なかなか乗り切れない試合でフラストレーションもたまりましたが、去年のファイナルでのあの光景を絶対に見たくないと思っていました。この(ファイナル)ゲーム1に勝つことの大きさは誰よりも重く考えてやってきたので、とくに(最初の)延長の時は自分がシュートを打たないといけないときに(相手に奪われる)パスをして『このままでは終われない』と思っていましたし、明日もそのつもりでやっていきたいです」

 今シーズン、チームはスキルコーチを招聘し、今村もドリブルなどのスキルを向上させ、自らの得点だけでなくアシストパスの精度にも磨きをかけ、より高いレベルでオールラウンドなプレーができる選手となった。

 琉球は桶谷HCの指揮の下、タレントよりもチームとしての戦い方に重きを置いてきた。千葉もベンチ層の厚いチームではあるものの、ファイナルでは琉球のディフェンス戦略の前に富樫勇樹ら数名の中心選手のみの得点に抑えた。一方、琉球はより多くの選手が伏兵となって要所でシュートを決めるなど、活躍。それは、琉球の先発以外の選手たちによる得点が2試合の合計で90点だったのに対して、千葉はわずか21点だったことでも示された。チャンピオンシップ(CS)とファイナルの最優秀選手が、アレン・ダーラムとコー・フリッピンというベンチから出てくる選手たちがそれぞれ選ばれたこともまた、このチームにはヒーローとなれる者がいたるところにいることを表していた。

 そうした集団として戦うカルチャーのある琉球で、今村がエースといういわば個の称号を与えられていることは、なかば相反するところがあるようにも感じられるが、彼に対してこめられた意味は従来からの絶対的スコアラーといったものではない。

 例えば、上述したようにスキルが上がったことで、中へ切れ込むと相手ディフェンダーが寄ってくる。自身による得点は難しくなる反面、パスをさばいて味方を生かすことはできる。今村は「より周りを巻き込んで」という言葉を何度も使ってきたが、どのような形でも自身が起点となってチームに対して効果的な働きをすることでエースの責務を果たすことこそが、琉球における彼の「エース像」なのだ。

 数字を見ると、レギュラーシーズンの平均11.3得点は前年からわずか0.8点上がったにすぎない。チャンピオンシップ(CS)での同14.2点は、昨年の16点を下回っている。ところが、総得点におけるフリースローやペイント内での得点が占める割合といった詳細まで見ると、レギュラーシーズンでもポストシーズンでも総じて上がっている。これは今村がよりリングへアタックする場面が増えたことの証といえよう。

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