トム・ホーバスHCと車いすバスケ鳥海連志が対談。銀メダル獲得の共通点は「チャレンジ」

  • 三上太●取材・文 text by Mikami Futoshi
  • photo by Murakami Shogo

トム・ホーバスHC×鳥海連志 
バスケットボール対談(前編)

 東京2020オリンピック・パラリンピックが閉幕して約半年。新しい年度を迎えた今、オリパラ合わせて109個のメダルを獲得したアスリートたちも、次のステージに向けて次の歩みを踏み出している。

今回対談した鳥海連志とトム・ホーバスヘッドコーチ今回対談した鳥海連志とトム・ホーバスヘッドコーチ 日本のバスケットボール界に、オリンピック史上初めての銀メダルをもたらした女子日本代表のトム・ホーバスヘッドコーチ(HC/当時)も、同じく銀メダルをつかみとった車いすバスケットボール男子日本代表の鳥海連志も然り。ホーバス氏はオリンピック直後の9月に男子日本代表のHCに就任し、2023年にフィリピン・インドネシア・日本で共催されるワールドカップに向け、新たなチーム作りに着手している。鳥海もまた今年開催予定のふたつの「ワールドカップ(23歳以下の「U23」と、フル代表)」に向けて新たな挑戦を始めている。

 HCと選手――立場は違えど「バスケットボール」を介して、同じような経験を重ね、今なお世界への挑戦を止めないふたりに、東京オリンピック・パラリンピックの振り返りから、2024年のパリ大会への思いなどを語ってもらった――。

* * *

――鳥海選手は「オフの時は、あまりバスケットボールのことは考えていない」とのことですが、女子バスケットボール日本代表が銀メダルを獲った東京オリンピックは見ていましたか? 

鳥海連志(以下、鳥海) もちろん見ました。

トム・ホーバス(以下、ホーバス) ありがとうございます。

鳥海 女子バスケに注目していたのは、オコエ桃仁花選手がいたからです。彼女とは一度お仕事を一緒にした経験があって、友だちがオリンピックに出ているという感覚で見ていました。ただ、試合を見ているなかで彼女だけじゃなく、女子日本代表は選手それぞれが最大限の力を発揮しているという感覚がありました。セットプレーというのか、フォーメーションというのか、いろんなものを持ってチームで戦っている感覚があって、そこは僕たちの車いすバスケと共通しているところだなと。それぞれがそれぞれの役割を全うしていくところは僕たちと似ているなと親近感を持って見ていました 。

――オコエ選手がホーバスHCに厳しい言葉をかけられているシーンが何度も放送されていましたが、そこは気になりませんでしたか?

鳥海 僕も叱られるというか、コーチに喝を入れられることはよくありますから、そこは気になりませんでした。むしろ、そういった関係性、つまり選手とコーチの人間関係は一緒に戦っていく上で絶対に必要な要素だと思っています。

ホーバス 私は異なるスポーツの選手とも話をしますが、それを言われるとびっくりするけれど、うれしいです。私は東京オリンピックまでの約5年間、ずっと女子日本代表チームと、その選手のことだけを考えてきたんです。だからこそ、何をしたらいいか、何が足りないかをずっと考えてきました。今回のように結果を出したあとに、他のスポーツ選手が私たちの試合を見て、そう言ってくれるのはうれしいです。

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