トム・ホーバスHCと車いすバスケ鳥海連志が語る、パリオリ・パラに向けた日本代表にふさわしいメンタル強化

  • 三上太●取材・文 text by Mikami Futoshi
  • photo by Murakami Shogo

トム・ホーバスHC×鳥海連志 
バスケットボール対談(後編)

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 バスケットボール女子日本代表を東京2020オリンピックで銀メダルに導いたトム・ホーバスヘッドコーチ(現・バスケットボール男子日本代表ヘッドコーチ)と、同じく東京2020パラリンピックで銀メダルを獲得した車いすバスケットボール男子日本代表の若きオールラウンダー鳥海連志。障害の有無に関わらず、高い向上心を持って、バスケに打ち込む姿勢が共通しているふたり。

リオパラを経て、車いすバスケ男子日本代表に欠かせない選手となった鳥海連志リオパラを経て、車いすバスケ男子日本代表に欠かせない選手となった鳥海連志 その対談の後半はバスケットボール女子日本代表の武器であり、今後、車いすバスケットボール男子日本代表が取り組もうとしている「3ポイントシュート」の話から、ふたりが見据える2024年のパリオリンピック・パラリンピックへーー。

――「ディフェンスからファストブレイク(速攻)」というスタイルは、サイズで劣る日本が基調とするもので、それはバスケでも、車いすバスケでも同様のようでした。鳥海選手はそれを東京パラリンピックでの銀メダル獲得で手応えとして実感されたのではありませんか?

鳥海 そうですね。僕たちはずっと世界に対して「走り勝つ」ということしか言っていなかったし、実際に世界に走り勝つことができて、胸を張ってそれを言えるようになったのがこの東京パラリンピックを終えてからなんです。そういう意味でも選手それぞれに自信がつきました。そのうえで今後は女子日本代表のように3ポイントシュートの本数を増やしていこうと取り組んでいます。

ホーバス そうなんですね。うれしいですね。

鳥海 ただ、実は今、なかなか3ポイントシュートを打てる選手がいないんです。それでも、誰もが3ポイントをシュートが打てるというチーム作りに入っています。スペーシングも広くなって、みんながいろいろと動けるようになっています。

ホーバス 車いすバスケのスペーシングは難しいですよ。車いすがある分、スペースが少ないから。

鳥海 少ないですね。

ホーバス 試合を見ているとみんながぶつかって、ぶつかって、前に行って、前に行ってでしょう。大変だし、難しいよ。 スタート、ストップ、スタート、ストップ......。 鳥海選手はその「スタート、ストップ」のリアクションが一番速いですよね。ぶつかって、相手が安心した時にはもう次のスタートが始まっているんです。

鳥海 ありがとうございます。そこに自信があるというよりも、僕の場合は上肢に障害があって、「だから車いす操作がうまくできなくてもしょうがないよね」と、車いすバスケを始めた頃はよく言われていたんです。それがめちゃくちゃ悔しくて、上肢の障害と車いす操作は関係ないというところは見せたかったので、その練習をずっとやっていました。その考え方は今も残っていて、車いすのセッティングを変えていくことに、コーチたちは「もういいんじゃないか」と言うのですが、セッティングを変えてもうまく操作できることを認めさせるにはチェアスキルを上げるしかないと考えているんです。

ホーバス アンストッパブルだね。でもそういうメンタリティはスーパースター選手のメンタリティだよ。そういうメンタリティがなければ銀メダルは獲れないですよ。だからこそ次は金メダルかもしれない。私はいつも言っているのですが、毎日上手くなりたいという気持ちを持ち続けなければ、うまくなることは無理ですよ。彼にはそれがある。間違いなくあります。

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