トム・ホーバスHCと車いすバスケ鳥海連志が対談。銀メダル獲得の共通点は「チャレンジ」

  • 三上太●取材・文 text by Mikami Futoshi
  • photo by Murakami Shogo

東京パラリンピックで日本の銀メダル獲得に貢献した鳥海選手 photo by Yohei Osada/AFLO SPORT東京パラリンピックで日本の銀メダル獲得に貢献した鳥海選手 photo by Yohei Osada/AFLO SPORT――なぜそのようなチャレンジをしようと考えたのでしょう?

鳥海 リオの時はスタメンじゃなかったし、試合にもあまり出られなかった。そのスタメンじゃなかったことに対してどうするか。車いすバスケは障害に応じて持ち点があって、障害の重い人ほど持ち点が低い。試合に出る5人の持ち点の合計が14点を超えてはいけないんですけど、僕は同じ持ち点の人からどうしてもスタメンの座を奪えなかった。そこでオールラウンダーに転向することを決意したわけです。ただ一番難しかったのは、自分がオールラウンダーになることよりも、それをいかにチームに浸透させるかでした。

ホーバス うん。

鳥海 チームメイトや、それこそコーチたちに『鳥海はオールラウンダーだ』と認めさせなければ、それがチームプレーになっていかないから、そこは一番時間がかかりましたね。リオから4年、それこそ2020年ぐらいからやっとチームが僕のプレースタイルを認めてくれたところがあって、そこが一番大変でしたね。 やり続けるしかなかった。

――すごいなと思ったのはコーチが「そのプレースタイルがダメだったらメンバーから外すよ」と言っても、鳥海選手はそれを貫き通したことです。

ホーバス すごいね。それはいつくらいの話? 2018年のワールドルドカップが終わってから?

鳥海 そうですね。2018年のワールドカップが終わって、そこから2年くらい経ってやっとチームに認めてもらいました。

――鳥海選手からホーバスHCに聞いてみたいことはありますか?

鳥海 ホーバスHCは選手との関係性をすごく大切にされていると思うのですが、特に大切にされていることはありますか?

ホーバス 私は元々バスケットボール選手でした。好きなコーチもいたし、そうじゃないコーチもいて、いろんな経験をしてきました。その先に日本でコーチングをするという仕事にたどり着いたわけですが、やはり私は日本人じゃないから日本語はペラペラじゃないんです。だから選手一人ひとりとのコミュニケーションが本当に必要なんです。練習中に怒ると選手たちが「え?」という感じで、僕の気持ちが伝わっていないのがわかります。だから練習や試合が終わってから、もう一度きちんと説明をします。そこは重要なところです。 やはり私の気持ちや考え方がわからなかったらついていけないと思います。

鳥海 そうですよね。

ホーバス いくら厳しく言っても、みんなが「トムは何を考えているかわからない」と思ったらついていけないわけです。やはりチームが強くなるためには一人ひとりの力が必要です。選手たちにもチャレンジさせたいんですよ。コミュニケーションがなければ絶対にチャレンジできないと思います。私の大学時代のコーチはすごく厳しかった。僕は楽しくやりたい。ただ一番楽しいことは勝つことであり、結果を出すことです。 私はいつも選手たちに「練習は厳しいけど結果を出したらそれはすごく楽しいことだよ」って言っているんですよ。オリンピックでも大事な試合に勝ったあとの選手たちの顔を見た時、最高な気持ちになりました。私は選手たちの喜ぶ顔を見たいんです。コミュニケーションはそのための重要なツールです。

――ありがとうございます。後編ではこれから目指すパリオリンピック、パラリンピックについてお聞かせください。

後編へつづく>>

Profile
トム・ホーバス
1967年1月31日生まれ。アメリカ・コロラド州出身。5歳の時にバスケを始め、大学卒業後、ポルトガルリーグを経て、1990年に日本リーグのトヨタ自動車ペイサーズ(現:アルバルク東京)に入団。5度の得点王や、2年連続の3ポイント王を獲得。2001年の引退。2017年に女子日本代表ヘッドコーチに就任。東京五輪では、日本史上初のオリンピック銀メダル獲得に導いた。現在は男子日本代表ヘッドコーチとして活躍中。

鳥海連志(ちょうかい・れんし)
1999年2月2日生まれ。長崎県出身。(株)WOWOW所属。パラ神奈川SC在籍。生まれつき両手足に障害があり、脛骨が欠損していた両下肢を3歳で切断。中学1年生の時に学校関係者に誘われたのがきっかけで車いすバスケに出会う。2015年に代表に定着すると、2016年、17歳でリオパラに出場を果たした。銀メダルを獲得した2021年東京パラでは大会MVPに選ばれ、次世代を担うエースへと成長した。

「チャレンジング・トム 日本女子バスケを東京五輪銀メダルに導いた魔法の言葉」

東京オリンピックで日本女子バスケをオリンピック史上初の銀メダルに導いたトム・ホーバスHCが教える、力を最大限引き出す方法。
平均身長が出場12カ国で2番目に低い176センチの日本は強豪国を次々と撃破し決勝に進出。「小さくても勝てる」を実践し、世界を驚かせた。
選手を突き動かしたのは、「シンプル」な言葉と、「ロジカル」な戦術と、圧倒的な「パッション」。バスケに関わる人間や男女にかかわらず、人・組織(チーム)を動かし、結果を出すための、本質のとらえ方、思考法を伝授する。
著者/トム・ホーバス
発売日/2022年2月8日
価格/1430円(税込)
出版社/ワニブックス
詳しくはこちら>>


「異なれ 東京パラリンピック車いすバスケ銀メダリストの限界を超える思考」

足りないものを嘆かず、あるもので生きていく。東京パラ車いすバスケ銀メダリスト・鳥海連志が伝えたい、「人と異なる」ことの重要性。
東京2020パラリンピック車いすバスケットボールでMVPを獲得した日本代表のスピードスター・鳥海連志が、過去の自分、現在の自分と向き合い、ありのままをつづる。
22年間という、決して長くはないけれど、誰よりも濃い人生を送ってきた鳥海が語る言葉の数々は、これからも長い人生を生きるわれわれにとって、ちょっとしたヒントとなるかもしれません。
著者/鳥海連志
発売日/2022年2月28日
価格/1430円(税込)
出版社/ワニブックス
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