川崎ブレイブサンダース・篠山竜青が理想とする『SLAM DUNK』のPGは?「湘北対山王戦直前のあのセリフが好き」 (2ページ目)

  • 水野光博●取材・文 text by Mizuno Mitsuhiro

――例えばどんなシーンに励まされましたか?

「湘北対山王戦で、河田(雅史)に圧倒される赤木(剛憲)に向けて、板前の格好をして乱入した魚住(純)が"華麗な技を持つ河田は鯛...""お前は鰈だ。泥にまみれろよ"と声をかけるシーンが好きなんです。このシーンは年齢を重ねるごとに染みるというか......。

 僕は中学までは神奈川県の中で"自分が一番点を取れる""一番スピードがある"って自信を持ってプレーしていました。でも、ステージが全国に広がると、自分より点を取れる選手やスピードがある選手がいっぱいいて、何度も壁にぶつかりました。その度に魚住の言葉に励まされていましたね。

 PG(ポイントガード)として生き抜いていくための道を模索して、身体能力に頼らず、頭を使ったり、地味できついことを厭(いと)わなかったり、何か自分にもチームに貢献できることがあるはずだと勇気づけられたんです。そういう意味でも年齢を追うごとに魚住の言葉がより染みてきました」

――チームに貢献するために、まさに泥にまみれる覚悟を持ったということですね。

「2019年のワールドカップのアジア予選や本戦で、代表での生き残りをかけた時もそうでした。PGのポジションを争う選手、特に若い選手の中には、PGでありながら身長が高い選手、圧倒的なスピードを持った選手、何かに特化した武器を持っているPGがいっぱいいました。

 また、"そういう選手を代表にするべきじゃないか"って声も僕の耳に届いて。自信が揺らぎそうになった時、魚住さんの言葉を思い出して必ず自分なりの方法でチームに貢献できるはずと信じることができました」

――なるほど。

「あと、好きなセリフで言えば湘北対山王戦の直前に、山王ファンの観客が言う"いつも黒子役に徹する深津のパスがあっての山王工業だ"ってセリフが好きです。深津(一成)が、好きなんですよね、PGとして。牧(紳一)、藤間(健司)、仙道、リョーちん(宮城リョータ)、いろんなタイプのPGが登場しますけど、自分の理想とするPG像に深津が一番近いというか。点取り屋じゃなくても、目立つ選手じゃなくても、長年チームを見てきた人から"あいつがいてこそ"って褒められたらめちゃくちゃうれしいですよね。だから、あの台詞は地味に好きです」

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