渡邊雄太が両親の前で涙の最多得点。大学最後のホームゲームで壁を超えた (4ページ目)

  • 杉浦大介●文 text by Sugiura Daisuke
  • photo by ZUMA Press/AFLO

 しかし――。もがき、苦しんだシーズンの中で自分なりの答えを見つけ、渡邊は逞しく成長していった。大敗したデビッドソン大学との試合以降、エースの渡邊に鼓舞され、見違えるようにハードにプレーするようになったジョージ・ワシントン大は9戦で6勝。もっとも厳しい時期を乗り越え、自信をつけた渡邊もそれまで以上に積極的に攻めるようになった。

 渡邊はシーズン終了までの20戦すべてでふた桁得点を挙げ、最後の10戦では平均19.7得点、5.9リバウンドという堂々たる数字。得意のディフェンスも健在で、目標のひとつに掲げていたアトランティック10カンファレンスの「ディフェンシブ・プレイヤー・オブ・ジ・イヤー」も受賞した。

そんなシーズンを最高の形で締めくくった"シニアナイト"。渡邊は後半に入っても攻め続け、フィールドゴールを11/17、フリースローを7/7と高確率で決めて得点を重ねていった。そして、最終クォーターも残り3分を切り、チームが大量リードした状況でフリースローラインに立った渡邊は、シュートを放ちながら堪えきれずに涙を流した。

 2本のフリースローを決め、カレッジキャリア最多の31得点に到達。試合終了間際に交代を告げられた際には、場内のファンから「Yuta! Yuta!」の大コールを浴びてまた涙が溢れた。苦しむ中で努力を続け、ついに自分の力を出しきれたという思いがあったからこそ、感情の昂りを抑えきれなかったのだろう。1カ月半前の悔し泣きとは違う、やり遂げたものだけが流せる美しい涙だった。

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