渡邊雄太が両親の前で涙の最多得点。大学最後のホームゲームで壁を超えた (2ページ目)

  • 杉浦大介●文 text by Sugiura Daisuke
  • photo by ZUMA Press/AFLO

"シニアナイト"は、アメリカの学生スポーツにおける恒例イベントだ。シーズン最後のホームゲームで、卒業間近の最上級生の家族が会場に招かれ、功績を讃えられる。いかにもファミリーを大事にするアメリカらしいセレモニーが展開され、その後に開幕するカンファレンストーナメントへの景気づけにもなる。

 誰よりも家族を尊敬する渡邊も、父・英幸さん、母・久美さんを招待した。試合前、両親が背番号12のユニフォームが収められた額を受け取り、笑顔で記念撮影していた姿が筆者の記憶にも残っている。

 練習や試合を行なったコート、勉強部屋も含め、とてつもなく長い時間をホームアリーナで過ごした渡邊にとって、このセレモニーがどれだけ感慨深いものだったかは容易に想像できる。しかしゲームが始まると、エモーショナルなセレモニーはプロローグに過ぎなかったことに気づかされた。

 この日の渡邊はいつになく積極的で、序盤から順調に得点を積み重ねていった。シュートタッチが抜群によく、ミドルレンジのジャプシュート、3ポイントシュート、ダンクなどを次々に成功。前半だけで19得点をマークし、フォーダム大学をほぼ独力で圧倒した。

「『今日はシニアナイトだ』とか、『親が日本から見に来てくれた』といったことを考えちゃうと自分のプレーに影響すると思ったので、シュートを狙うことだけを考えて、『とにかく攻め気でいこう』と思っていました。その結果、いいプレーができたのでよかったです」

 試合後にそう述べたとおり、背番号12からは無用な緊張や、チームメイトへの遠慮、気遣いがまったく感じられなかった。

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