【NBA】連覇を目標としないスパーズHCポポビッチの真意 (2ページ目)

  • 宮地陽子●文 text by Miyaji Yoko photo by Getty Images

 それだけ素晴らしいバスケットボールを見せたスパーズは、オフの間もフリーエージェントになった選手と再契約し、ルーキーをひとり加えただけの「ほぼ同じチーム」で、今シーズンに挑む。スパーズが狙うのは、これまで5回優勝(1999年・2003年・2005年・2007年・2014年)していながら、一度も成し遂げたことがない連覇......と思いきや、ポポビッチいわく、「連覇は今シーズンの目標ではない」という。

 1年前のポポビッチは、2013年のファイナルで敗れた悔しさを選手たちに思い出させ、「NBA制覇」というキーワードをモチベーションの源(みなもと)として使っていた。しかし今シーズンは、それで選手たちを駆り立てるつもりはないようだ。ベテラン選手たちからは連覇を狙うコメントもあるのだが、ポポビッチはむしろ、選手たちのそういった気持ちを抑えようとしているかのようだ。

「選手たちの頭の片隅には、連覇したいという思いがあるだろう。でも、それは私たちの『マントラ(※)』ではない。『自分たちのレガシー(遺産)にかかわる』とか、『連覇しないとグレートチームではない』ということでもない。そういう訳の分からない戯言(ざれごと)とは、私たちは無縁だ」

※マントラ=古代から中世にかけてアジアで用いられていた言語「サンスクリット」で、「文字」や「言葉」を意味する。

 さらに、こうも言う。

「昨シーズンのメンバーがみんな戻ってきて、私たちはいつもと同じように、最善を尽くすだけ――。その結果、プレイオフの1回戦で負けるか、2回戦で負けるか、カンファレンス・ファイナルで負けるか、最後まで勝ち続けるのか、誰にも分からない。連覇すれば素晴らしいことだが、しなくても人生は続く」

 なぜポポビッチは、連覇を今シーズンの目標としないのだろうか。ただでさえ、対戦相手から毎試合、標的とされる中、チームにかかるプレッシャーを少しでも減らそうとしているのだろうか?

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