2014.11.27

【NBA】連覇を目標としないスパーズHCポポビッチの真意

  • 宮地陽子●文 text by Miyaji Yoko photo by Getty Images

 サンアントニオ・スパーズのヘッドコーチ(HC)、グレッグ・ポポビッチが求める水準は高い。それは、スパーズの選手に対しても、趣味のワインに対しても、そして毎日のようにどうしようもない質問を投げかけてくる記者たちに対しても……。

コートサイドで選手を鼓舞するスパーズのグレッグ・ポポビッチHC たとえば、記者の質問に呆(あき)れたときは、答えの代わりにこんなコメントが返ってくる。

「まったく、君は一晩寝ずにその質問を考えたのか?」「みんな、こういう質問をして給料をもらっているのか?」

 ポポビッチの取材現場では、よくある光景だ。しかし、ベテラン記者も慣れたもので、「そうですよ。給料は安いですけれどね」と答え、すると、ポポビッチは苦笑しながら、「安いのか、それじゃ仕方ないな」と同情したような素振りを見せたりする。厳しい一方で、人間味もあるのだ。

 そんなポポビッチが、「これ以上にないぐらいの水準」だと唸(うな)ったのが、2014年NBAファイナル最後の3試合での、スパーズ選手たちのプレイだった。第3戦、第4戦、第5戦で、スパーズの選手は攻守でお互いに助け合い、パスをすべきときにパスを出し、ディフェンスでも素晴らしいローテーションを見せ、ポポビッチが求めてきた理想のバスケットボールを体現した。その結果、マイアミ・ヒートを圧倒して優勝を決めた。

 夏の間、ポポビッチはその3試合の映像を改めて見直したという。たとえ勝った試合でも、悪かったところを探してしまうのがコーチという生き物なのだが、このときばかりは違った。見れば見るほど、惚れ惚れとする戦いぶりだったのだ。

「『彼らは誰だ? 誰がコーチだ? どこから来たんだ?』と思いながら見ていた。それまで私たちは、連続してああいう試合を見せたことはなかった。まったく一度もなかったんだ」と、ポポビッチは感嘆する。

「時間が経つにつれて、あの素晴らしさに感謝する気持ちが強くなってきている」