2013.07.12

井上雄彦、歴代スラムダンク奨学生と語る
「高校では終われない、君へ。」

  • スポルティーバ●構成 text by Sportiva
  • 喜 安●写真 photo by Kiyasu

谷口大智(たにぐち・だいち)●1990年4月15日生まれ、奈良県出身。洛南高校を経て第2回スラムダンク奨学生に選ばれる。留学先のサウスケント・スクールからアリゾナ・ウエスタン大学(2年制)へと進学し、2012年9月にサウスイースト・オクラホマ州立大学(4年制)へ編入。199センチ、ガード・フォワード。「彼らに会いにアメリカに行くと、愚痴がどーっと(笑)」(井上)

――谷口選手と早川選手は、強豪チームで常時出場していた高校時代と環境がガラッと変わったと思います。アメリカでバスケット生活を始めたころの印象に残っている出来事は何ですか?

谷口 まず、英語が全然話せなかったので大変でした。周囲が何を言っているのか聞き取れず、コーチの指示も分からなくて……。

井上 まったく分かんなかったの?

谷口 ほぼ、ですね。自分の中で勝手に理解してプレイすると、「そうじゃない!」って怒られて……。でも、ジミーが割と早く英語を習得したので、練習中は「そっち、ちゃう。こっちや」と言ってくれるので、しょっちゅうジミーに意味を聞いていました。とくかく1年目は苦労しましたね。日本だとバスケでトップレベルなら、勉強しなくても高校・大学に進めたりするので、勉強をするという習慣がまったくなくて。「勉強しなきゃならない!」とは分かっているんですけど。

井上 勉強のやり方が分からないんだ。どんだけ勉強してないんだって(笑)。ジミーはどう?

早川 僕は勉強しようと思わなかったですね。

井上 威張ることじゃないよ。

(爆笑)

早川 いやいや、悪い意味じゃなくて。勉強するという義務感があると、自分はダメなんで。だから、たとえば映画を観ながら英語に触れて、興味を持つようにしたんですよ。まずは英語に近づくという努力から始めたんです。そうして授業に行くと、「これ、映画で聞いた英語だ」という感じになって。今まで勉強なんてやったことないから、急に勉強しろって言われても無理ですよ(笑)。

井上 なるほど。稜はどうだった?

山崎 僕も最初はまったくダメでした。2ヵ月経ってサマースクールに行きだしてから、少しずつ英語が分かるようになりましたけど、常に3期生の(矢代)雪次郎さんと一緒にいましたね。

――奨学生は常にサウスケント・スクールで一緒に行動しているんですか?

谷口 僕とジミーは寮も違ったし、もともと男子校出身なので、「男と一緒にいる必要はないな」と思っていました。だから普段はひとりでいて、夜は日本のバラエティやアニメをパソコンで見たりして。

早川 大智はパソコンで何百話あるアニメを全部、見終わりましたからね。意味が分からん(笑)。

井上 それを英語で観れば良かったのに。

早川 『ワンピース』に出てくる技の名前は、英語じゃダメなんですって。日本語の技の名前で言うからいいんだって大智は言ってます。

谷口 アメリカ人のチームメイトが『ワンピース』を知っていたので盛り上がったんですが、技の名前を英語で言われても全然わからない(笑)。それ、誰が使う技なのって?

井上 そこを活用していれば、もっと英語の上達も早かったのに(笑)。

山崎 僕も大智さんと同じような生活でした。日本のバラエティやアニメをパソコンで見てましたね。『ワンピース』とか。

井上 集英社の取材だからって、そんなに『ワンピース』って連呼しなくていいよ(笑)。

(爆笑)

――みなさんは学業面でもバスケット面でも苦労されたようですが、先生は心配して声をかけようとしたこともありますか?

井上 やっぱりプレイできないこと、試合に出られないことが一番ストレスになるなと思っていました。ときどきメールのやりとりはしますけど、直接電話はしないですね。もちろん心配ではありますけど、それは仕方のないことですからね。彼らはそのためにアメリカに行っているわけですから。自分たちだけで乗り越えなければ。でも、1年に1回ぐらい、アメリカに行って会うと、愚痴をどーっと言われますね(笑)。

谷口 特に、僕とジミーですね(笑)。

井上 アメリカで壮絶なことがあったみたいですから(笑)。

早川 そうなんですよ。アイスホッケーというスポーツは試合中、「リンク上なら喧嘩してもいい」という暗黙のルールがあるんですが、アイスホッケーの選手がそのテンションで俺に向かってきたんですよ。向こうからちょっかいを出してきたのに、「止めろよ」って言ったことに対して逆ギレしてきて……。アジア人ということで見下してくる場合もありましたし、いろいろ大変でしたよ。

井上 だいぶ抑えて話してますけどね(笑)。