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「現代のF1ではセナ・プロのような戦いにはならない」中野信治が展望するチームのイメージ最優先の王者争い (4ページ目)

  • 川原田 剛●取材・文 text by Kawarada Tsuyoshi

【急成長を遂げているノリス】

 そのピアストリを相手にしてノリスはここまで互角の勝負を演じてきました。おそらく昨シーズン最初の頃のノリスであれば、今のピアストリに簡単にやっつけられていたと思います。

 しかしノリスは昨シーズン、フェルスタッペンと激しい攻防を繰り広げるなかで、ドライバーとしても人間としても一段レベルが上がっています。チャンピオン争いを経験して成長したノリスだからこそ、今、ピアストリと戦えていると思います。

 25歳のノリスと24歳のピアストリ。マクラーレンのドライバーラインナップは現代F1の理想形だと思います。2023年に新人のピアストリを獲得し、当時F1参戦5年目の勢いのあるノリスと組ませました。

 翌2024年はノリスがフェルスタッペンと争うことで成長し、彼らが戦う姿をピアストリは間近で見て学び、マクラーレンのふたりのドライバーは正常進化してきました。そして今年、チームメイト同士でチャンピオン争いを演じ、お互いに刺激し合い、さらなる成長を遂げています。

 F1参戦3年目を迎えたピアストリは、間違いなくこれからのF1を背負う存在になると思います。彼が後半戦、ノリスとのチャンピオン争いを通してどう成長していくのかを楽しみにしていますが、ピアストリの場合は変わらないことが強さだと思います。

 もし何か変わってしまったら、逆にそこに隙が生じてしまうような気がします。ピアストリの場合は、変化を楽しみにするというよりは、いかに変わらないで戦い続けられるかという点に注目していきたいと思っています。

終わり

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【プロフィール】
中野信治 なかの・しんじ/1971年、大阪府生まれ。F1、アメリカのカートおよびインディカー、ルマン24時間レースなどの国際舞台で長く活躍。現在は豊富な経験を生かし、ホンダ・レーシング・スクール鈴鹿(HRS鈴鹿)のエグゼクティブダイレクターとして、国内外で活躍する若手ドライバーの育成を行なう。また、DAZN(ダゾーン)のF1中継や毎週水曜のF1番組『WEDNESDAY F1 TIME』の解説を担当、2025年夏、世界中で大ヒットしたブラッド・ピット主演の映画『F1 / エフワン』の字幕監修も務めた。

著者プロフィール

  • 川原田 剛

    川原田 剛 (かわらだ・つよし)

    1991年からF1専門誌で編集者として働き始め、その後フリーランスのライターとして独立。一般誌やスポーツ専門誌にモータースポーツの記事を執筆。現在は『週刊プレイボーイ』で連載「堂本光一 コンマ1秒の恍惚」を担当。スポーツ総合雑誌『webスポルティーバ』をはじめ、さまざまな媒体でスポーツやエンターテイメントの世界で活躍する人物のインタビュー記事を手がけている。

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