「速さは予想より差はない」F1ウィリアムズ育成の松井沙麗(13歳)が踏み出した世界への挑戦「ヨーロッパのレースのほうが楽しい」 (3ページ目)

  • 川原田 剛●取材・文 text by Kawarada Tsuyoshi
  • 村上庄吾●写真 photo by Murakami Shogo

【ヨーロッパでやりたい...自ら選んだ道】

ーーところで沙麗さんは昨年、ホンダのドライバー育成プログラム「ホンダ・レーシング・スクール鈴鹿(HRS)」のカートクラスに参加していました。ホンダのドライバーとしてステップアップしていこうという考えはなかったのですか?

広史 私の気持ちとしてはこのままHRSでやりたかったので、HRSのプリンシパルを務める(佐藤)琢磨さんに相談しました。HRS終了式の時に「ウイリアムズから育成プログラムに参加しないかという話が来ており、どうしようかと迷っています」と伝えると、「沙麗の気持ちはどうなの?」と本人に聞いてくれました。

 すると沙麗は「ヨーロッパでやりたい」と答えていました。本人がそういう気持ちであって、ウイリアムズから話があるのであれば、ヨーロッパに行くべきだと話してくれました。

沙麗 単純にヨーロッパのレースのほうが楽しかった。それが一番の理由です。ヨーロッパでは参戦ドライバーが多いので競争が激しいですし、バトルも接近戦です。前を走る選手に追いついたら、何も考えずに抜くというスタイルです。

 逆に日本は頭を使った戦いです。1位や2位を走っていたら、バトルをせずに後続グループを引き離そうとすることが多々あります。

5歳からレースを始め、6歳の頃にはプロになりたいと思っていたという5歳からレースを始め、6歳の頃にはプロになりたいと思っていたというこの記事に関連する写真を見る

広史 日本は、お父さんがレースをしてしまうんです。私も沙麗に「勝ちたかったら余計なバトルするな。レースの展開を考えて、ポジションを守って逃げきれ」とアドバイスをしたことがありますが、最後のチェッカーの時に前にいればいいんだと日本では考えます。

 でもヨーロッパでは、ポジションがどこだろうととにかく前の選手を抜け、というスタイルなんです。

ーー日本とヨーロッパのスタイルの違いはどこから来ているのですか?

広史 向こうではカートはフォーミュラカーに乗るための勉強の場だと徹底されています。日本のように結果を出してチャンピオンになるのも大事ですが、戦い方やドライビングを覚える場として位置づけられていると感じます。

 だからカートでもドライバーの動き方はF1と一緒です。ドライバーはヘルメットを持ってサーキットに来て、レース直前にレーシングスーツに着替えて走って、終わったらもう帰ってもいい、という世界です。マシンの整備や後片付けはしません。あと、ヨーロッパは世界中からお金持ちが集まるので、とにかく設備がすごい。カートでもF1のような大きなモーターホームがあります。

沙麗 日本のトップドライバーでもヨーロッパのレースではなかなか決勝に残れません。やっぱりレベルはヨーロッパのほうが高いと思いますので、そこで挑戦してみたいです。あと、ヨーロッパの生活が合っていると感じます。私は日本では人見知りなのですが、ヨーロッパでは向こうから積極的に話しかけてくれますので、友だちができやすいんです。

 日本のレースでは同じクラスに女性ドライバーはほとんどいませんでしたが、「チャンピオンズ・オブ・ザ・フューチャー・アカデミー」では4分の1は女性。最近はお父さんがミカ・ハッキネンさん(※1998、1999年のF1世界王者)のエラ(12歳)ともあいさつする仲になれました。できることならずっとヨーロッパでレースをしたいと思っています。

ヨーロッパ生活のため英語を勉強中。「最近は英語のドラマを常に流して耳に慣らさせるようにしています」ヨーロッパ生活のため英語を勉強中。「最近は英語のドラマを常に流して耳に慣らさせるようにしています」この記事に関連する写真を見る

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