角田裕毅とタイム差0.183秒 岩佐歩夢、F1マシン初ドライブで速さをアピール (3ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki

【F1ドライバーたちと同レベルであることを証明】

 C4を初めて履いた時にはグリップの違いに驚き、グリップを使いきれなかったという。それでもC4の2回目のランではしっかりと修正し、最後のC5のアタックでは1分25秒753というトップから1.360秒差のタイムを記録してみせた。

 これは、同時刻に同じマシンで走っていた角田裕毅とわずか0.183秒しか違わないタイム。テストプログラムが違うとはいえ、岩佐がすでにF1ドライバーたちと同レベルで走れるドライバーであることは証明できたと言える。

「エンジニアは『1日を通してすごくいい仕事をしてくれた』と言ってくれましたし、パフォーマンス的にも最後はすごく悪くないペースで走れていた。いくつか改善すればすごくいいレベルにいるんじゃないかと(データ分析担当の)パフォーマンスエンジニアからも言ってもらえました」

 テストセッションが残り40分となったところで2セット目のC5タイヤを履き、アタックラップの総仕上げをやるはずだった。午後5時を過ぎて太陽が傾いて気温と路面温度も下がり、ダウンフォース量もタイヤグリップもエンジンパワーも最も上がるコンディションだ。

 しかし、これからアタックに入ろうかというところで岩佐のマシン後方から白煙が上がり、そのまま引火してしまったため、マシンを止めなければならなかった。

「最後にプッシュラップをやる予定だったんですが、その直前に最終コーナーでマシンにトラブルが発生しました。詳しいことはわかりませんが、マシンから煙が出て火が出て、僕にできることはなかったと思います。クルマが大丈夫か、心配です。

(1セット目のアタックでは)ソフトタイヤのグリップにちょっとビックリしたところもあったけど、最終的にはまだいけたと思います。あとコンマ4〜5秒はいけるかな、というくらいですね。だからこそ2セット目を一気にいきたかったんですけど、ちょっと残念でしたね」

 最終コーナーでマシンを降りてピットレーンを歩いて戻ってきた岩佐の表情は、さすがに硬かった。それでもエンジニアに状況を報告し、自分にやれることは何もなかったことを確認し、テスト内容に対してエンジニアたちから高い評価を得たことで、岩佐は晴れ晴れとした表情をしていた。

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