ホンダとヤマハはどうして勝てなくなった? 今季のMotoGP前半戦で表彰台に登壇した回数...わずか5回だけの惨状 (4ページ目)

  • 西村章●取材・文 text by Nishimura Akira
  • photo by Nishimura Akira, ©MotoGP.com

今季の表彰台はドゥカティの占拠が続く今季の表彰台はドゥカティの占拠が続くこの記事に関連する写真を見る

【日本企業の凋落は続くのか】

 閑話休題。

 MotoGPのホンダとヤマハの話題に戻すと、あまりの勝てなさに、ここ数戦では選手たちの陣営離脱も今後の可能性として囁かれるようになった。また、両メーカーのマシンが欧州勢のドゥカティやKTM、アプリリアから大きく後塵を拝している現状を改善するために、両メーカーヘ対してコンセッション(技術規則の制限を緩めて優遇する措置)を適用する可能性まで取り沙汰されるようになった。

 このコンセッションは本来、新たにMotoGPに参入してきたメーカーが古参陣営と早く競えるようにするための戦闘力向上を図る措置だ。いわば「様々な面で不利なニューカマーに下駄を履かせて、技術的な有利不利の差を縮めよう」という考え方のルールを、「平等な条件下で競いあってきたにもかかわらず、技術力の差でマシン開発に立ち後れている」古参陣営へ適用することが果たして妥当なのかどうかは、当事者や第三者を含む慎重な議論が別途必要になるだろう。

 それにしても、どうしてホンダとヤマハがここまで勝てなくなってしまったのか。そこには様々な要因が複雑に絡み合っているのだろうし、その原因を究明できていれば、そもそも今のように大きな欧州勢との戦闘力差は開いていないだろう。

 たとえば、新型コロナウイルス感染症の蔓延以降、日本と欧州の間にはロジスティクスや技術者の物理的移動を含む様々な障壁ができたため、それで欧州メーカーとの差が広がっていった、という説明はいかにももっともらしく聞こえる。

 だが、それならばパンデミック真っ只中の2020年にスズキのジョアン・ミルがタイトルを獲得し、翌2021年にはヤマハのクアルタラロが王座に就いたことの説明がつかない。さらに言えば、もしも今年もスズキが参戦を継続していれば、日本企業勢が現在のような壊滅状態に見えていたのかどうかもわからない(そうであったのかもしれないし、そうではなかったかもしれない)。

 ホンダとヤマハのかつてないほどのこの苦戦は、あくまでMotoGPの世界の、この2社に固有の現象なのか。それとも、様々な産業の世界市場で近年凋落傾向が著しいといわれる日本企業勢に通底する問題の何かが、二輪ロードレースの世界最高峰の場で現象として象徴的に顕在化しているのか。

 5週間のサマーブレイクを経て8月にシーズン後半戦が再開すれば、このまま負け続けるにしても復調の兆しを見せるにしても、今よりはもう少し実相を掴みやすくなるだろう。

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