ホンダとヤマハはどうして勝てなくなった? 今季のMotoGP前半戦で表彰台に登壇した回数...わずか5回だけの惨状 (3ページ目)

  • 西村章●取材・文 text by Nishimura Akira
  • photo by Nishimura Akira, ©MotoGP.com

【ホンダF1復帰も大人の事情?】

 簡単な要約記事なので、そこに切り出されている社長発言の真意はよくわからない。株主の質問を全否定するのではなく、あくまで「可能性はゼロではない」という程度の社交辞令的回答とも考えられる。

 ただ、そうであったとしても、20世紀から連綿と続いてきた伝統ある社内のレースグループを解体し、長年培ってきた自分たちのレース文化を投げ捨ててスズキのレース活動に関わってきた多くの人々の人生を翻弄したことを考えると、この発言はあまりに言葉が軽いという印象がある。

 言葉が軽いということでいえば、ホンダが5月末に発表したF1復活も、あくまで個人的感想だが、苦笑に近い印象を抱いた。数年前には二度とF1には復帰しない、と大見得を切って撤退しておきながら、その後も活動継続というべきかどうか微妙な立ち位置で関わり続けた結果、今回、大々的な参戦復帰宣言をしたこと自体については、きっとその背後には様々な大人の事情があるのだろう。また、企業活動の方針転換はそれくらいの臆面のなさでむしろちょうどいいのかもしれない、とも思う。

 ただ、レギュレーションが変わってカーボンニュートラルの研究開発に役立つから参戦する、という理由づけからは、モータースポーツの「スポーツ」という部分(文化)に対する敬意をいまひとつ感じにくい。

 もちろんモータースポーツは自動車産業の研究開発と深く関連しているので、企業の参入動機に功利主義的なインセンティブが強く働くことを否定はしない。けれども、「それならば功利的な理由で潮目が変われば、きっとまたあっさり撤退するのでしょうね」という揶揄にはどう答えるのだろう。

 選手たちが勝敗を競いあう戦いである以上、その競技に対する愛情やレースに勝ちたいという強い願いを、たとえ大義名分や優等生的な建前であったとしても、もっと前面に押し出すくらいの志(こころざし)を打ち出してもよかったのではないか。

 それにそもそも、企業姿勢としてそんなに出たり入ったりを何度も繰り返していて(撤退後もPUの技術サポートを継続しているという、ヌエのような理屈はあったとしてもだ)、ずっとそこで戦い続けてきた人々を相手に勝てるものなのだろうか。とはいえ、これはあくまでF1の事情をよくわかっていない、門外漢の雑感にすぎないのだけれども。

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