中野信治がF1王者争いを解説。大クラッシュのイギリスGPなどハミルトンとフェルスタッペンの力関係も語った (4ページ目)

  • 川原田 剛●文 text by Kawarada Tsuyoshi
  • 桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo

 まさに1980年代後半から90年代前半にかけてのアイルトン・セナとアラン・プロストの戦いの再現と言っていいと思います。チャンピオン争いがさらに過熱していけば、後半戦にはシルバーストンのような際どいシーンがこれからも起こり得るはずです。

 極限状態に追い込まれた時にどういう動きをするのか。そこで、ハミルトンとフェルスタッペンはドライバーとしての真価が問われるだろうし、チャンピオンの行方を左右する大きなポイントになると思います。

 引いたほうがいいのか、攻めたほうがいいのか。その判断はその場その場で変わってきますが、最終的には賢いドライバーが最後にタイトルを手にするでしょう。圧倒的なマシンの性能があれば別ですが、今季のような拮抗した状況では、頭を使ったドライバー・チームが勝つと思います。

 ベルギーから始まる後半戦でフェルスタッペンの戦いがどう変わっていくのか、という点に僕は注目しています。自分に足りないものがあることを受け入れて変わっていかないと、進化できないと思います。しかし大概のドライバーは、なかなか自分に足りない部分がある事実をなかなか受け入れられない。"俺は速いんだ、正しいんだ"と思ってしまう。

 かつてのハミルトンもそうでした。でも彼も2016年にチームメイトのニコ・ロズベルグとのチャンピオン争いで負けたあと、大きく変わっていきました。持ち前の速さに加え、メンタルをしっかりとコントロールする術を身につけ、チームやファンを味方につけ、賢く強いドライバーへと進化していきました。

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