中野信治がF1王者争いを解説。大クラッシュのイギリスGPなどハミルトンとフェルスタッペンの力関係も語った

  • 川原田 剛●文 text by Kawarada Tsuyoshi
  • 桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo

 でも、速さや勢いでは、やっぱり若いフェルスタッペンのほうが若干上回っていると思います。結果的にフェルスタッペンが完成されてない部分があることで、ハミルトンとの力関係のバランスがちょうど取れている印象です。

 ふたりの力関係を如実に表わしていたのが、シルバーストン・サーキットで開催された第10戦のイギリスGPだったと思います。1周目のふたりのクラッシュシーンはまさに前半戦のハイライトであり、今季のチャンピオン争いの激しさを象徴していました。僕は何度もコプス・コーナーでの接触シーンをスローモーションで見直しましたし、自分でシルバーストンを何度も走った経験も踏まえて言わせてもらえば、お互いに"当たるだろうな"とわかっていたと思います。

 ハミルトンがコプスでインに入った時点で、もうフェルスタッペンとしては(接触を避けるために)引くしかなかった。レース終盤、ハミルトンとフェラーリのシャルル・ルクレールが同じような状況になりましたが、ルクレールはアウト側に飛び出していきました。あれしか接触を避ける方法はないんです。

 でも勝利のためにふたりともあそこで引くことはできなかった。低ダウンフォースのセッティングで直線スピードが優っていたハミルトンとしては高速コーナーのコプスで前へ出なければ、追い抜きのしづらいシルバーストンではフェルスタッペンにずっと抑えられることになります。逆にハイダウンフォース仕様のレッドブル・ホンダに乗るフェルスタッペンはストレートの速度が伸びないので、あそこでハミルトンに先行されたら逆転するのは難しいとわかっていました。

 両者にとって"勝つためにはここしかない"という勝負所だったので、当たるべくして当たったと思っています。勝利に対して貪欲なふたりが譲れない戦いを繰り広げているなかで起こったレーシングインシデントというのが僕の結論です。

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