ホンダF1、ラストシーズンの勝算。「隠し球」でメルセデスを乗り越えろ (4ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • 桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

 シューマッハは角田のように周囲をあっと言わせるようなバトルをするわけでもなく、予選で圧倒的な速さを見せるわけでもないため、世間の評価はそれほど高くない。しかしそれは、FIA F2タイトル獲得という至上命題を果たすため、あえて採ったスタイルだろう。

 一方、荒れることの多いF2のレースで確実に混乱を避けて、ポイントを手にする危機回避能力と安定感は優れていた。追い抜きなど必要な時には攻めた走りも可能であり、切り替えがうまいドライバーだ。

 父の名が大きすぎるがゆえに過小評価されているが、速いドライバーでなければF2で上位争いはできない。また、安定したレース運びができなければ、チャンピオンタイトルは獲れない。

 F1でも初年度は「学習の年」として背伸びすることなく、自分に求められることを冷静に判断しながら成長していくだろう。派手さはないだろうが、着実にステップアップしていき、来たるべきときに花を咲かせるタイプだ。

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 一方もうひとりのルーキー、ニキータ・マゼピン(22歳)はデビュー前から世間を騒がせている。

 F2では幾度か危険なドライビングを見せたことで、「F1に適格ではない」との批判を受けた。昨年もスチュワードに「危険である」と裁定されたドライビングは3回(ベルギー=1回、バーレーン=2回)。そういうレッテルを貼られているがゆえに、危険なドライビングばかりしている印象がある。

 昨年はシリーズランキング5位。ただ、実力が試されるレース1で2勝を挙げるなど、速さはある。FIA F2初参戦の2019年はARTグランプリでマシンセットアップ方針が合わずに速さを発揮できなかったが、2年目はハイテック・グランプリともにセットアップやレース戦略を組み立てていった。

 限界まで相手を追い詰めようとするレースやバトルに対するスタンスは、あらためる必要があるかもしれない。だが、ドライバーとしては理知的で用意周到なタイプだけに、ターゲットを間違えなければ結果に結びつく可能性も十分にある。環境が整えられれば、マゼピンはシューマッハとともに落ち着いて成長していくのではないだろうか。

(つづく)

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