女性プロドライバーの苦悩。マシンを壊した後「男性と扱いが違う」難しさ (4ページ目)

  • 川原田剛●取材・文 text by Kawarada Tsuyoshi
  • 能登直●写真 photo by Noto Sunao(a presto) 磯貝琢哉●動画 video by Isogai Takuya

ーー具体的にはどんなことを経験したのですか? 

いとう
 例えばですが、ドライビングでミスしてマシンをぶつけてしまった時のことです。男性だったらめっちゃ怒られて、ラリーの世界だったら「自分で直せ」と言われ、深夜まで作業をすることもある。でも、女性には「いじらなくていいから。先に帰っていいよ」というような対応で、変に優しくされてしまうんです。私もメカニックさんと一緒に作業して、クルマの修理の方法を知りたいと思うんですが、そのあたりは男性と女性でちょっと対応が違うと感じます。 私はむしろ厳しく言われた方がチームのスタッフと一緒に戦っている気持ちになります。それぐらい腹をくくってやっています。

ーー体力面はいかがですか? 普段はどんなトレーニングをしているのですか? 

いとう 
最近はジムで筋肉をつけるようなトレーニングはしていません。ラリーで一番大変なのは、集中力を切らさないこと。ラリーカーはエアコンがないマシンが多いので、とにかく暑いんです。そうした中でも、集中力を切らさずにドライビングをするための持久力や精神力が大事になってきます。 

 あと、左足ブレーキを使うこともあるので、踏力は必要になりますね。それらを鍛えるために、自転車が効果的だと思っています。自転車に乗ってよくトレーニングしています。

ーーさまざまな困難もある中、ここまでモータースポーツを続けてきた原動力は何ですか? 

いとう やっぱり好きだからですね。正直、モータースポーツはなかなかお金にはなりません。今年、私は女性のレースシリーズ、競争女子選手権(KYOJO CUP)にも参戦していますが、競争女子は賞金があります。ただ、全日本ラリーは優勝しても賞金はありません。名誉だけ。私の場合、今でもモデル活動がメインの収入源になっています。

 それでもマシンに乗っていると楽しいですし、「もっとうまくなりたい」との思いが常に芽生えてきます。やっぱりラリーやレースに出場すると、反省点が必ずあります。「次は完璧に走ろう」と思い、また新たなイベントに出場する、その繰り返しでここまで来ました。

4 / 5

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る