長島哲太、Moto2初優勝。最終ラップ、亡き友・富沢祥也を想った (7ページ目)

  • 西村章●取材・文・撮影 text & photo by Nishimura Akira

 2010年に祥也がMoto2史上初優勝を飾ったここカタールのロサイル・サーキットで、その10年後に哲太が同じく圧倒的な強さを見せて優勝した。チェッカーフラッグ後のウィニングランで、長島はマシン上で右腕を大きく伸ばし、人差し指で天を指さした。

 砂漠の彼方に日が沈む18時にレースがスタートしてから、20周の戦いを終えて長島がトップでチェッカーフラッグを受けるまでの40分間、息を詰めるようにレースを見つめていた世界中の人々は、世情を覆う不安や閉塞感のことなど、おそらく念頭から消え去っていたに違いない。

 そして、ゴールの瞬間には、10年という歳月を経て紡ぎ出された、事実だけが伝えることのできる祥也と哲太のドラマにきっと心を震わせたことだろう。スポーツが人の気持ちを揺さぶるというのは、そういうことだ。そしてそれこそが、スポーツの勝利だ。

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