NHKマイルCに異例のローテで挑むセリフォス。重賞2勝の大本命馬に死角はあるか (2ページ目)

  • 新山藍朗●文 text by Niiyama Airo
  • photo by Sankei Visual

 それにしてもなぜ、同馬は朝日杯FSのあとにレースを使わず、"ぶっつけ"でGI本番を迎えるのか。関西の競馬専門紙記者がその点について説明する。

「実はこの春、NHKマイルCのあとに『結果次第でGIをもう一戦』という計画が陣営にはあります。そこで陣営は、その2戦をいい状態で迎えるためには、NHKマイルCの前に1回使うよりは、使わないほうがいいと判断したようです。ですから、特にアクシデントがあった、というわけではありません」

 トライアルというのは、文字どおり試走。本番に向けて何かを試したり、馬の臨戦態勢を整えたりするためには効果的な一戦だ。だが一方で、レースを使えれば、馬は消耗する。

 その「効果」と「消耗」を天秤にかけて、セリフォスの陣営は「消耗」を避けること、つまりレースを使わないほうを選択したということだ。

 そうして、セリフォスが放牧先から栗東の厩舎に戻ってきたのは、通常よりやや早めの4月初旬だったという。以来、予定どおり、順調に乗り込まれている。

 その稽古ぶりも見てきた先述のトラックマンは、「ひと追いごとに、いい動きをするようになりました。今では(本番を前にして)唸り声をあげています」と言う。朝日杯FSのあとに休ませて、成長をうながした効果は確実にあったようだ。

 しかも、そのトラックマンによれば、この間の休養によって"進化"を感じさせる動きも見せているという。

「(2戦目の)GIII新潟2歳S(8月29日/新潟・芝1600m)の時もそうでしたが、この馬はスピードに乗ると左にもたれる癖があるんです。NHKマイルCの舞台も左回りの東京ですから、その癖が出ないか心配していましたが、帰厩後の稽古ではそういった素振りはまったく見せなくなっていました。それだけ、進化・成長しているということだと思います」

 それでも、ひとつだけ、疑問に思うことがある。

 それは、朝日杯FSで負けたこと、だ。

 もちろん、勝ったのが皐月賞で1番人気(結果は3着)に推されたドウデュースなのだから、善戦と見ることもできる。だが、そのあたりがこの馬の能力の上限ではないか、といった捉え方もできる。

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