本田圭佑の言葉に見つけた「世界に勝つためのヒント」

  • 飯尾篤史●文 text by Iio Atsushi  山添敏央●写真 photo by Yamazoe Toshio

6月特集 ブラジルW杯から1年 ~日本代表と世界はどう変わったのか?~(4)

 たぶんそんな練習をしているチーム、世界のどこを探してもないと思うんですよ――。

 本田圭佑の言葉に、日本が世界に勝つためのヒントが隠されているかもしれない。

先制点を決めて喜ぶ選手たち(左から岡崎慎司、本田圭佑、宇佐美貴史)先制点を決めて喜ぶ選手たち(左から岡崎慎司、本田圭佑、宇佐美貴史)「そんな練習」とは、いったい何か。それは、速攻の精度を高めるための練習である。

 4−0で勝利したイラク戦。コーナーキックから槙野智章が決めた2点目を除く3ゴールは、いずれも素早く縦を突く、速攻から陥(おとしい)れたものだった。

 先制点は、柴崎岳のロングフィードで抜け出した本田が逆サイドネットを揺らして生まれたものだった。4点目も柴崎のフィードがDFにクリアされ、こぼれ球を拾った原口元気が逆サイドネットに蹴り込んだ。

 なかでも見事だったのが、3点目だ。柴崎のパスから宇佐美貴史がドリブルをスタートすると、その右前を本田が走り、左側を岡崎慎司が走る。慌てた敵のDF4人が宇佐美に吸い寄せられていった瞬間、左外に逃げた岡崎にパスが出て、岡崎が左足でゴールを決めた。

 3人で4人のDFを切り裂くコレクティブ(組織的)な速攻――。「今日一番良かったと思うのは、選手が前を向いたとき、2〜3人がトップスピードでダッシュしていけたこと」と岡崎は振り返ったが、3点目の場面がまさにそれだった。

 こうしたゴールシーンを見れば(いや、ゴールシーン以外の場面でも)、「何年か前からチームがやってきた方法を抜本的に変えた」とハリルホジッチ監督が言うように、ショートパスを連ね、ボール支配率を高めて主導権を握ろうとするチームから、手数をかけずに素早く縦を突くチームへと変貌を遂げたのは、明らかだ。

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