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有村智恵のクラブを長年支え続けるフィッター・梶山駿吾氏 フィッターの役割と"音"にこだわるヤマハならではのクラブ作り (2ページ目)

  • text by Sportiva

【同じヘッドでもプロが見たらちょっと違う】

有村 そうなんだ。わかんない(笑)。

梶山 (有村プロは)かなり感覚も研ぎ澄まされているので、感覚で物を言うこともあります。「この辺で来ないんですよ」という抽象的な表現になる時と、「あと1グラムぐらいの鉛を貼ったら変わるかな」と表現をすることの両方があるので、男子プロと女子プロ、両方の感覚を持っているのが有村プロです。まあ、すごい面倒くさい(笑)。

有村 ちょっと!(笑)

梶山 ではなく、すごいトップアスリートだな、という印象ですね(笑)。

有村 確かに、他のツアープロ担当の方は「これはこういうクラブです。こういう動きをします」と言って渡してくださることが多いんですけど、梶山さんは私の反応を見るのが好きだから、「何も言わないからとりあえず打ってみて」と言って持ってくるんです。実際に打ってみて、「ちょっとこういう感じがします」と返したら、「正解!」とか言って、答え合わせをされて。

梶山 本当に(有村プロの)感覚にマッチしているのかをこっそり確認したいっていうのもありますし、有村プロは理解力が高いので、先に何かを言ってしまうと先入観が入るんですよ。例えば「これは右に行きにくいクラブだよ」と言ってしまうと、「右に行きにくいんだ」と思いながら打つので。そういう先入観を植え付けたくないのもあります。

有村 最初に「こういう動きをします」と言われたら、私もそういう動きをさせようとするんですよね、スイングのなかで。

 だから、梶山さんみたいに、とにかく何も聞かずに「いつも通りのスイングで打ってみて」と言ってもらって、打った時に「(このクラブは)こうかも?」と感じる方が自分には合っているかもしれません。結局、いつも通りのスイングでうまく打てないといけないじゃないですか。でも、やっぱりプロゴルファーだから、なんとなく「こういう動きをさせてみてください」と言われると、それに合わせられちゃうんですよね。

 ですが、いざ試合で自分の思い通りに振ろうと思ったら感覚が違った、ということが多々あって、そのたびにクラブを作り直してきていました。何も先入観なく打つことが大事なのに、そこに発想が行き着かなかったんですよね。

 それと、プロゴルファーはみんなそうだと思うんですけど、クラブを試す時は練習日が多いので、リラックスもしている分、うまく打てることの方が多いんです。

 試合にはすごく細かい微調整をしてから臨むので、その微調整がクラブに伝わらなかったり、リラックスして打った時はあんなにうまく打てたのに、シビアな状況だとクラブが思い通りに動かない、と感じることが本当に多々あって。特にドライバーだと、ヘッドの形もそうですし、バランス、つまり重さをどこに置くか、加えて何のシャフトを選ぶかでも、組み合わせは数えられないぐらい、何万通りどころじゃないですよね。

梶山 そうですね。

有村 ツアー担当の方が、この選手はたぶんこういうのが好きで、こういうのが合うっていうのをある程度わかってくれていないと、選手もクラブ選びだけで練習が終わっちゃうんですよ。

 メーカーさんは同じように作っているんだけど、(個体差で)ちょっとずつ顔が違ったりするんです。普通の人が見たらわからないと思うんですけど、プロが見たら、同じヘッドだけどちょっと違う、ということが出てくるので。そのなかから、このプロはこのヘッドが好きだな、という感覚は、ツアー担当の方のセンスやフィーリングによりますよね。

梶山 クラブは各社、ウチもそうですけど、やっぱり物は全部いいはずなんですよ。そのなかから、プロに合わせる担当者やクラブを作る人間が、どれぐらいプロを理解できているかはすごく重要になってくると思います。

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