今季女子ツアー「女王争い」の行方と、後半戦「注目選手」を永久シードプロが分析する (2ページ目)

  • 古屋雅章●取材・構成 text by Furuya Masaaki
  • photo by Getty Images

 若いうちに海外を経験し、打ちのめされたり、ショックを受けたりして、帰国してから自分のゴルフを見失ってしまう選手は結構います。でも、山下さんはそうはならないだろう、と私は見ています。

 というのも、彼女は自分のゴルフがある程度確立されるまで国内ツアーに集中し、年間女王のタイトルを獲得したあとに海外メジャーに参戦する、というスタイルをとってきたからです。そのため、帰国後に自らのゴルフに迷いが生じる、ということは少ないと思うわけです。

 実際、全英女子の戦いを終えたあと、悔しい思いを漏らしたのと同時に、「(自分には)足りない部分が多いし、帰ってからも来年に向けて頑張っていきたい」とコメント。国内ツアーで戦いながら来年の海外メジャー挑戦に向けて取り組むと、前向きな姿勢を示しました。後半戦でどんなプレーを見せてくれるのか、ますます楽しみです。

 一方、申ジエさんは、昨季は肘を手術したこともあってか、時に集中力を欠いて、短いパットを外すといったシーンも目立ちました。しかし今季は、心・技の真価が問われる海外メジャーにおいて、集中力の高さを発揮。強風のなかでの長いパットの距離感など、さすがは世界のトッププレーヤーであると思わせました。

 彼女の日本ツアーにおける大きな目標は、ひとつは年間女王。もうひとつは、日本での永久シード権を得られるツアー通算30勝(現在、通算28勝)。彼女にとって、今季はその2つの目標達成のチャンスですから、これまで以上に気合いが入っているはず。女王候補の最右翼と言っていいでしょう。

 今後の女王争いですが、9月7日から始まる日本女子プロ選手権が最初のポイントになりそうです。山下さんにとっては昨季、ツアールーキーだった川﨑春花さんに4打差を逆転されて優勝を逃した一戦。リベンジへの思いは強いはずですし、それを果たせるかどうかが、女王争いの行方を大きく左右するのではないでしょうか。

【その他の注目選手】
◆岩井明愛(21歳/メルセデス・ランキング3位/今季ツアー1勝)
◆岩井千怜(21歳/メルセデス・ランキング4位/今季ツアー2勝)
 妹の千怜さんのほうが1年早くツアー優勝するなど、どちらかというと"早くコツをつかむのがうまい"という感じがします。21歳なのに、熟練のゴルフをするイメージがあります。

 一方、姉の明愛さんは、どこか物足りなさを感じます。というのも、潜在能力は明愛さんのほうが高いものを持っていると感じるからです。先の全英女子でも、畑岡奈紗さんとともに日本人最上位の11位タイで終えましたが、まだまだ上を望める存在だと思っています。

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