「苦節」6年。初優勝した柏原明日架の焦りを消した大先輩の助言 (2ページ目)
7番アイアンで放った一打は、ピン方向に向かっていった。グリーンをオーバーしてしまったものの、過去のミスを振り払い、優勝を確信できた一打となった。
加えて、強気のパッティングも光り、この日はパッティングでショートするシーンが一度もなかった。
「(今年8月の)CAT Ladiesで優勝争いした時は、ハーフターンしてから(パットが)ショートしてばかりで、結果、優勝を逃してしまった。今日は絶対にショートしないと、攻める気持ちを持って(後半の)9ホールを戦おうとしていました」
トップ10入りが2度しかなかった昨シーズンは、年間獲得賞金が44位とシード権ギリギリの成績しか残せなかった。今季も、序盤は数度の予選落ちを喫するなど苦しい時期が続いた。
そして、宮崎出身の柏原は、今年の7月下旬、センチュリー21レディスでも予選落ちを喫した際、ラウンド後に同郷の大先輩である大山志保にこう問いかけた。
「私が勝てないのはなんでですか?」
大山は言った。
「大事なのは、1勝目の早さじゃない。将来、ゴルフをやめる時に、生涯に何勝したかを一番大事に考えたほうがいいよ」
渋野日向子や畑岡奈紗をはじめ、3つ下の「黄金世代」と呼ばれる面々が次々に勝利を挙げていく。柏原は焦りを覚え、誰より勝利を欲していた。そんな時に、目先の勝利を渇望するよりも、長いゴルフ人生を考える重要性を、大山は柏原に説いたのだ。
「この言葉は、私の中にあった焦りみたいなものをふりほどいてくれましたし、目の前の課題に取り組んだほうがいいなと、自分自身、気づくことができました。さらっと言っていただいたひと言ですけど、大きな言葉でした」
初勝利の美酒に酔った柏原は、10月3日から4年前に"取りこぼした"日本女子オープンに臨み、さらにその2週後にはホストプロとして臨む富士通レディースが待っている。
「(優勝したとはいえ)今週ももったいなプレーがたくさんあった。そこを改善して......早く2勝目をあげたいです」
ジュニア時代から将来を嘱望され、美貌も兼ね備えた艶やかな大器が、いよいよ才能を花開かせる日が訪れた。
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