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香川真司、遠藤航を取り込んだ名将クロップ 「勝負以上」を追求する姿勢が人を惹きつける (3ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Yoshiyuki Komiya

【「他人を打ち負かす必要などない」】

 遠藤航を獲得したリバプール監督時代、クロップが『Sky News』で理念を語っていたことがあった。

「私がやりたいのはリバプールというクラブの構造や文化を確立することにある。私がいなくなっても、リバプールの土台となるフィロソフィーは"選手やスタッフ次第"であってはならない。"クラブが守ってきたフィロソフィー次第"でなければならないんだ。その哲学に殉じて意味のあることをやっていけたら、きっと正しい道を進むことができるだろう」

 その理念は、マンチェスター・シティを率いていたジョゼップ・グアルディオラに似ている。もっと言えば、グアルディオラの師匠であるヨハン・クライフがバルセロナでやり遂げたことに近いだろうか。戦い方の哲学がクラブの土台になって、あとを継いだ者がその伝統を更新していく。

 そのグアルディオラは、「クロップとの勝負は重要だった。リバプールのようなライバルがいることで強くなれた」と語っている。お互いがプレミアリーグでし烈な争いを演じたことで、どちらも欧州王者になることができた。勝ち負けをかけて戦うが、勝ち負けのために戦っているのではなく、サッカーの奥深さに辿り着こうとしてきた。流儀、理念、あるいはフィーリングが根っこにあったのだ。

 クロップも、勝負以上のことを追求していたことを裏づける発言をしている。

「『サッカークラブでどんな功績を残したいか』と聞かれたことは一度もないが、『墓石に何と刻んでほしいか』と聞かれたことがある。正直に言うが、『彼はいい人だった』とだけ書いてほしい。それだけで十分、私の唯一の願いだ。成功するために、他人を打ち負かす必要などない。これまでそんなことをしたことはないし、これからもするつもりはない」

 クロップはドイツ代表監督として「ゲルマン魂」を取り戻すことはできるか。それは歴史の再構築に近い挑戦だ。

ユルゲン・クロップ
1967年、ドイツ・シュツットガルト生まれ。現役時代はマインツなどでプレー。2001年に現役を引退すると、当時2部だったマインツの監督に就任し、2004年に1部昇格を果たす。その後、2008年からドルトムント、2015年からはリバプールの監督を務める。2026年、ドイツ代表監督に就任。

著者プロフィール

  • 小宮良之

    小宮良之 (こみやよしゆき)

    スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。

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