久保建英とは決別 鈴木彩艶の指揮官ウナイ・エメリが実践する「数学的思考のマネジメント」とは
名将たちの人心掌握術(8)
ウナイ・エメリ
プレミアリーグのアストン・ヴィラを率いるスペイン人監督ウナイ・エメリは、現代サッカーにおける最高の戦術家のひとりだろう。チームをシステム化する点で傑出している。セビージャでヨーロッパリーグ3連覇を達成後、パリ・サンジェルマン、アーセナル、ビジャレアル、アストン・ヴィラと有力クラブを率いているのは成功の証だ。
エメリは理知的、論理的で、勝利の法則を知っている。一方で、部下を駒や部品のように扱ってしまうことがあり、その点では人気があるとは言えない。場合によっては嫌われてしまうことがある。優秀なエメリは、嫌われるリーダーなのか?
2025-26シーズンはアストン・ヴィラでヨーロッパリーグを制したウナイ・エメリ photo by Kazuhito Yamada/Kaz Photography ビジャレアル時代のエメリは、久保建英との間に軋轢が生じたエピソードが有名である。彼自身も久保の獲得を望んだにもかかわらず、重用することはなかった。結果は半年で退団だ。
「タケ(久保)とは話したが、彼は『思ったよりもプレーする機会が少なかった』とチームに残るよりも、移籍することを望んでいた。行ないはよかったし、チームを助けてくれた。足りないものはあるが、これから成長し続けるだろう」
当時のエメリは記者会見でそう明かしていたが、決別に至る予感は十分にあった。実はスペイン大手スポーツ紙『アス』は、以下のようにエメリの久保評を報じていた。
「タケはすばらしい選手で、成長したいという野心が強い。彼は自らの挑戦を自覚しているが、その目標に対して急いでしまうところがあって、それはいいことではない。適応しながら成長し、戦っていく必要がある。
彼は3つのポジションでプレーできるし、7番のポジション(右サイドアタッカー)が最適だが、そこは競争も激しい。トップ下、左アタッカーでも成長するべきだし、今はプロセスにある。彼はメディアスターだけに外側の騒ぎも巻き起こるが、ピッチの外だけでなく、ピッチのなかでもスターでなければならない」
エメリは久保をそう評価していたが、教師が生徒を諭すような口調が引っかかった。知性を振りかざしたような説明は、どこか鼻持ちならないところがある。ある意味でふたりの関係の悪化は必然だった。
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著者プロフィール

小宮良之 (こみやよしゆき)
スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。

