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【MLB】大谷翔平とドジャースはどう進化する? ワールドシリーズ出場2チームが示す「新しいマネーボール」の衝撃と潮流

  • 奥田秀樹●取材・文 text by Hideki Okuda

大谷翔平とブルワーズの主砲ジャクソン・チョーリオ(左) photo by Getty Images大谷翔平とブルワーズの主砲ジャクソン・チョーリオ(左) photo by Getty Images

現地10月23日(日本時間24日)からスタートするワールドシリーズ。今年はミルウォーキー・ブルワーズとタンパベイ・レイズの対戦となったが、両チームのスタイルは、かつて疑問視された戦術を見直し、進化させる野球であった。
一方でロサンゼルス・ドジャースは3連覇の道を断たれた今、大谷翔平の二刀流とともに新たな道を模索しようとしている。
今年の頂上決戦は、今後のMLBの潮流を占う意味でも興味深いものとなる。

【ブルワーズとレイズが示した野球の新スタイル】

 ロサンゼルス・ドジャースがミルウォーキー・ブルワーズに4連敗し、ワールドシリーズ3連覇への挑戦を終えると、日本ではデーブ・ロバーツ監督の采配に批判が集まった。

 バントをしない。走者を動かさない。何も仕掛けず、選手任せではないか。日本の野球には、監督が何かを仕掛けることで試合の流れを変えるという考え方が根強い。犠打で走者を進め、盗塁やエンドランで相手を揺さぶる。監督の手腕は、そうした采配によって評価されてきた。

 しかし、メジャーリーグではセイバーメトリクス(データを統計学的に客観視し、選手の貢献度やチーム戦略を評する手法)の発展によって、野球の常識が大きく変わった。犠打は走者を進める一方で、貴重なアウトをひとつ失う。多くの場面で得点期待値を下げることが明らかになり、安易にアウトを差し出す戦術は敬遠されるようになった。出塁率や長打力が重視され、盗塁についても成功確率が厳しく問われるようになった。

 ところが今季、メジャーリーグの野球に新たな進化の姿が鮮明に浮かび上がった。その象徴が、ワールドシリーズで対戦するブルワーズとタンパベイ・レイズである。両球団が実践しているのは、昔ながらの"スモールベースボール"への回帰ではない。かつてデータ分析によって効率性を疑問視された戦術も、分析技術の進歩によって新たな価値が見出されている。走塁、守備、打撃、選手育成。野球のあらゆる要素を科学の力で磨き上げ、新しい勝利の方程式を生み出そうとしている。

 2000年代初頭、オークランド・アスレチックスは、限られた予算で強豪に対抗するため、当時十分に評価されていなかった出塁率に着目した。その球団運営はかつて「マネーボール」と呼ばれ、メジャーリーグに大きな変革をもたらした。それから20年以上が過ぎ、データ分析は球界全体に浸透した。出塁率や長打率を重視することは、もはや特別な発想ではない。

 米スポーツ専門サイト『ジ・アスレチック』のイノ・サリス記者は、ブルワーズとレイズの野球を分析し、両球団こそ現代のマネーボールを体現しているのではないかと論じた。かつてのアスレチックスが出塁率という過小評価された能力に着目したように、両球団は走塁、守備、打撃技術などに新たな価値を見出している。

 象徴的なのが盗塁だ。盗塁は成功すれば得点の可能性を高めるが、失敗すればアウトをひとつ失う。一般に損益分岐点は成功率70〜75%程度とされる。今季、ブルワーズとレイズの盗塁成功率はいずれも75%だった。

 両球団は、ただ積極的に走っているわけではない。投手の動作や捕手の送球、走者のスタートなどを分析し、アウトになる危険を抑えながら次の塁を奪おうとしている。かつて盗塁を減らす方向に働いたデータ分析が、今度は盗塁を増やす方向に働いている。同じ合理性の追求が、時代とともに異なる答えを導き出している。

 守備でも同じことが起きている。サリス記者は、レイズの外野手が必ずしも打球への最短経路を走っていないにもかかわらず、優れた守備成績を残していることに注目した。重要なのは、打球に対する最初の反応だという。足の速さだけではない。打球が飛んだ瞬間、どれだけ早く正しい方向へ動き出せるか。その能力を測定し、選手の獲得や育成に生かしている。

 ブルワーズも、ボールをできるだけ引きつけ、広角に打ち分ける打撃技術を追求している。強く打つことだけでなく、相手守備のいない場所へ打球を運ぶ可能性を高めようとしている。昔から野球で重視されてきた走塁、守備、コンタクト能力。それらが新しい分析技術によって再評価されている。

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著者プロフィール

  • 奥田秀樹

    奥田秀樹 (おくだ・ひでき)

    1963年、三重県生まれ。関西学院大卒業後、雑誌編集者を経て、フォトジャーナリストとして1990年渡米。NFL、NBA、MLBなどアメリカのスポーツ現場の取材を続け、MLBの取材歴は26年目。幅広い現地野球関係者との人脈を活かした取材網を誇り活動を続けている。全米野球記者協会のメンバーとして20年目、同ロサンゼルス支部での長年の働きを評価され、歴史あるボブ・ハンター賞を受賞している。

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