【ワールドカップ】モロッコは敗れても強豪国の仲間入りか フランス相手にもパスワークで前進できる理由 (3ページ目)
【4年後はさらに進化する!?】
ボールを持ってサッカーをする意思が明確にある。これもかつてのオランダとの共通点である。
今大会、ビルドアップをしないチームはほぼいなかった。弱小と見られながらグループステージを突破したコンゴ民主共和国、カーボベルデもボールを持ったらパスをつないでの前進を図っていた。
一方で、ハイプレスを敢行するチームは少なかった。
UEFAチャンピオンズリーグ(CL)では、パリ・サンジェルマンとバイエルンがオールコートのマンツーマンによるプレッシングを行なっている。ところが、W杯ではそこまでアグレッシブな守備は見られず、ミドルゾーンの守備からハイプレスへの移行も限定的。日本、エクアドル、カナダくらいしかやっていない。
そのため、ポジショニングの変化によって一時的な数的優位を作ることが可能であり、モロッコはその状況を最大限に生かしていた。
ボランチのニール・エル・アイナウィがセンターバック(CB)の間に下がる、あるいはSBがハーフスペースに入るなど、ビルドアップ段階でフリーマンを作ってパスワークを安定させ、さらにサイバリとウナヒの変幻自在の動きで引き起こされる流動性によって前線までボールを運ぶことができた。
しかし、あらゆる局面で人数が多いのではないかと思わせるモロッコのパスワークも、準々決勝のフランス戦では効力が半減している。流動性によるアドバンテージはフランスの1対1の強さによって消されていたからだ。
もし、W杯の戦術がCLを後追いすると仮定すると、流動性と一時的な数的優位による守備側のズレを拡大していくモロッコのパスワークは、ズレが最小化されることで効力を失うかもしれない。
フィニッシャーを分散化させているがゆえの決定率の低さも課題だろう。偽9番方式にはありがちで、1974年のオランダも数多くチャンスは作れるがフィニッシュが雑だった。モロッコは準々決勝でサイバリを負傷で欠いたのも響いていた。
前回大会、モロッコは4-1-4-1の強固なミドルブロックからのショートカウンターが強みだった。ところが、今回はボール保持を軸とした流動的なスタイルに変貌。アフリカネーションズカップ終了後にワリド・レグラギ前監督が辞任し、モハメド・ワハビ監督に代わったのが3月。ごく短期間にまったく異なるプレースタイルに変化したのは驚きだった。
CBふたりにイッサ・ディオプ、シャディ・リアドの新戦力を抜擢し、5月にフランスから国籍変更した18歳のアイユーブ・ブアディを起用する大胆采配を行ない、サイバリのCF、ウナヒのトップ下と既存戦力のブーストにも成功。
ワハビ監督の手腕もさることながら、その下地があったということ。4年後、さらに進化したモロッコが見られるかもしれない。
著者プロフィール
西部謙司 (にしべ・けんじ)
1962年、東京生まれ。サッカー専門誌「ストライカー」の編集記者を経て2002年からフリーランスに。「戦術リストランテ」「Jリーグ新戦術レポート」などシリーズ化している著作のほか、「サッカー 止める蹴る解剖図鑑」(風間八宏著)などの構成も手掛ける。ジェフユナイテッド千葉を追った「犬の生活」、「Jリーグ戦術ラボ」のWEB連載を継続中。
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