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プレミアリーグのFW診断 移籍金100億円超のストライカーたちを鄭大世がチェック (3ページ目)

  • 安洋一郎●取材・文 text by Yasu Yoichiro

【戦術にハマる選手、ハマらない選手】

ヴィクトル・ギェケレシュ(アーセナル) 
移籍金:5500万ポンド/112億円 
プレミアリーグ成績:11試合4ゴール0アシスト

 長らくアーセナルは、1トップが弱点と言われていました。ヴィクトル・ギェケレシュは昨季50ゴール以上を決めた実績を引っ提げ、チーム念願の9番タイプのストライカーとしてチームに迎え入れられたと思います。

 ただ、僕自身は、そのポジションに得点を決めることに長けたFWを置いたところで同じような現象が起こると思っていました。アーセナルはリバプールと同じく逆足WGを配置しているので、FWの選手からすると点を取るのは難しいです。

 それでもギェケレシュは何度かネットを揺らしましたが、チームの機能性が向上しているとは言えないと思います。

 その理由としては、裏ばかりに要求して足下への縦パスを受けたがらない傾向にあるからです。

 真ん中でも楔のパスを受けられる選手がいたら他の選手が生きてきます。チームとしてはカイ・ハヴァーツやミケル・メリーノのように、周りを生かすことができる偽9番の選手がいたほうが機能すると思います。

 今のアーセナルは、ギョケレシュが覚醒して得点を奪う回数に比べて、機能していない時間があまりにも長すぎるのが弱点です。

 勝てている時期は問題ないですが、外回しや裏狙いばかりになるとチームの攻撃は単調になり、陣形も間延びするリスクがあります。

 メリーノ起用時に機能している様子を見ると、ハヴァーツが戻ってくれば、ギェケレシュと併用になると予想しています。

ジョアン・ペドロ(チェルシー) 
移籍金:6000万ポンド/123億円 
プレミアリーグ成績:13試合4ゴール3アシスト

 クラブW杯優勝に大きく貢献(大会途中に加入)したジョアン・ペドロは、旧来の9番タイプでもネオ9番タイプでもなく、何にも属さない独自のストライカー像がある選手ですね。

 自分自身の得点の取り方を知っている選手で、ゴールを決めるセンスを軸に、パスやドリブルなど他の能力も目立ちます。決して大柄ではないですが頭でのゴールも多く、クロスへの入り方もうまいです。

 チェルシー加入直後から相性のよさを見せるコール・パーマーとのコンビネーションについては、ジョアン・ペドロが足下でボールを受けるプレーが好きなことが要因のひとつに挙げられると思います。

 パーマーのようなパス&ゴーを狙う選手にとっては、楔を収めてくれる選手のほうが自分も生きやすいです。

 チェルシーへの適応の早さは驚きでした。型にハメられると持ち味を発揮しづらい選手だと思うので、組織として完成されているチームでは適応が難しいと予想していました。

 今のチェルシーは個が入り乱れている上に、エンツォ・マレスカ監督もジョアン・ペドロにはわりと自由を与えていると推測しています。

>>後編「鄭大世が注目するプレミアリーグのベテランストライカーたち」へつづく

著者プロフィール

  • 鄭大世

    鄭大世 (チョン・テセ)

    1984年3月2日生まれ。愛知県名古屋市出身。朝鮮大学校から2006年に川崎フロンターレに入団し、FWとして活躍。2010年からはドイツへ渡り、ボーフム、ケルンでプレー。その後韓国の水原三星、清水エスパルス、アルビレックス新潟、FC町田ゼルビアで活躍し、2022年シーズンを最後に現役を引退した。北朝鮮代表として2010年南アフリカW杯に出場している。

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