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【チャンピオンズリーグ(CL)】パリ・サンジェルマン(PSG)もうひとつの顔 栄冠をもたらした巨額マネー

  • リカルド・セティオン●文 text by Ricardo Setyon
  • 利根川晶子●翻訳 translation by Tonegawa Akiko

 パリ・サンジェルマン(PSG)が念願のチャンピオンズリーグ(CL)初優勝を果たした今、誰もがPSGを誉めそやしている。「なんてすばらしいチームなんだ」とメディアは書き立てる。私たちに、新たに魅力的な王者が生まれたと信じ込ませようとしている。

 だが筆者は、決勝のタイムアップの笛を聞いた瞬間、何とも言えない違和感に襲われたのも事実である。これから書くことはサッカーの話ではない。奇跡の話でもない。「世界最高のチーム」を称賛するものでもない。

 もちろん、デジレ・ドゥエの才能は本物だろう。ウスマン・デンベレの変貌と献身、ひとつのパスもミスしないヴィティーニャの技術、ブラッドリー・バルコラやジョアン・ネヴェスの成長、フヴィチャ・クヴァラツヘリアの技術と強靭さ、アクラフ・ハキミの闘志、マルキーニョスの経験、批判され続けたジャンルイジ・ドンナルンマの英雄的復活......そしてルイス・エンリケという謙虚な天才──彼は現代的な指導者で、生まれながらの勝者だ。

 これらはすべて真実だし、語るのは自由だ。だが、PSGの物語はそれだけでは終わらない。ここで語るのは、上記とは異なるPSGというクラブの、もうひとつの側面だ。欧州王者となったこのチームの、もうひとつの顔とは――。

悲願のチャンピオンズリーグ初優勝を成し遂げたパリ・サンジェルマンphoto by Kazuhito Yamada/Kaz Photography悲願のチャンピオンズリーグ初優勝を成し遂げたパリ・サンジェルマンphoto by Kazuhito Yamada/Kaz Photographyこの記事に関連する写真を見る 彼らの優勝は決しておとぎ話ではなく、すべては数字を背景にしている。

 思い出してもらいたい。少し前まで、皆が語るPSGのイメージはまるで違っていたはずだ。何年もの間、PSGは"悪役"だった。カタール資本がクラブを買収したのは2011年。それ以降、チームは欧州サッカー界における「マネー」の象徴となった。

 スポーツウォッシングという言葉をご存じだろうか。国家や団体、企業などがスポーツを利用して、自らのイメージ向上を図ったり、問題を隠ぺいしたりする行為だ。カタールは自国での人権問題などから目を反らすためにPSGを利用し、ワールドカップを開催した。カタールとPSGはまさにスポーツウォッシングの象徴だった。

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