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【チャンピオンズリーグ(CL)】パリ・サンジェルマン(PSG)もうひとつの顔 栄冠をもたらした巨額マネー (2ページ目)

  • リカルド・セティオン●文 text by Ricardo Setyon
  • 利根川晶子●翻訳 translation by Tonegawa Akiko

【そんなロマンチックな話ではない】

 フランス国内では別な意味でも嫌われていた。なぜならPSGこそ、リーグ・アンを破壊した張本人だったからだ。均衡を崩すことで、手に汗握るわくわくするリーグを「一頭だけが走るつまらないレース」に変えてしまった。

 カタール資本が入ってからの2012-13シーズン以降、PSGは13年で11回リーグ優勝している。例外は2016-17シーズンのモナコと、2020-21シーズンのリールだけ。ちなみにその2クラブの主力選手たちの多くは、翌年以降、PSGに買われていった。

 ネイマールをバルセロナからゴリ押しで獲得したことでも、多くの反感を生んだ。キリアン・エムバペは「移籍する」と騒ぎ続け、リオネル・メッシがPSGのユニフォームを着ている姿も違和感でしかなかった。あれほどのカリスマであるズラタン・イブラヒモビッチですら、PSGを人々から愛される存在に変えることはできなかった。

 そんな空気が今、突然、変わったのだ。

 ネイマール、メッシ、エムバペ――世界最高の選手たちを手放したにもかかわらず、立ち直ったチーム。ドゥエのような若い才能が生まれてくるサッカー界の新たな寵児......。メディアはPSGを、まるで下部組織出身の選手たちで構成された、スーパースターや巨額資金に頼らずに、努力と団結で道を切り拓いたチームのように描いている。2008年から2012年のバルサ黄金期、もしくは90年代の"アヤックスの奇跡"のように――。

 現在、語られているこれら物語は、確かに感動的で魅力的に見えるが、本当のPSGの姿はそんなロマンチックな話からはほど遠い。

 CLの決勝でルイス・エンリケが送り出した11人の先発メンバーに、PSGのユースや下部組織で育った選手はひとりもおらず、そのスタメンの市場価値は合計で4億8000万ユーロ(約782億円)だった。ひとりあたり4000万ユーロを超える。一方のインテルはどうだったか。あの日、ミュンヘンで戦ったインテルの先発メンバーは総額でせいぜい2億8500万ユーロ(約470億円)だ。

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