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プレミアリーグ優勝目前のリバプールの歴史 『ダイヤモンドサッカー』でのみ見ることができた1970年代の黄金時代 (4ページ目)

  • 後藤健生●文 text by Goto Takeo

【金子アナとリバプール】

 それから数十年の時を経たある日、僕は解説者として金子アナウンサーと一緒に仕事をするという貴重な経験をした。それも、リバプールの試合だった。

 黄金時代のリバプールの試合を数多く実況したためか、金子アナウンサーは自他ともに認める大のリバプールファンだった。

 控室で、金子さんは黄金時代のリバプールの資料を見せてくれた。僕が「昔のことを知っている人」だと思ったので、ご自宅からわざわざ持ってきてくれたのだ。

 すべて手作りの資料だった。

 現在では海外の試合の映像などいくらでも見ることができるし、インターネットで検索すれば様々な情報も手に入る。また、番組制作会社には「データマン」と呼ばれる人たちがいて、様々なデータやエピソードを集めてまとめておいてくれるから、解説者や実況アナウンサーはそうした資料を見ながらしゃべることができる。

 だが、「ダイヤモンドサッカー」の時代はそうではなかった。

 もちろんインターネットなどなかったし、同番組以外に試合の映像を見ることはできなかったのだ。ビデオテープ自体が貴重品だったから、放映された映像も保存されていなかったことだろう。

 だから、金子アナウンサーはご自分で実況した時に見た選手の特徴などをメモしたり、新聞や雑誌から様々な情報を抜き出して手書きで資料を作っていたのだ。

 控室で貴重な資料を見ながら話が盛り上がったのはいいのだが、その後、実況の仕事が始まってからも金子アナウンサーはついつい昔話が多くなってしまった。それで、僕が目の前の試合に話を戻す役割を果たすことになった......。

 とにかく、金子アナウンサーと一緒にリバプールの試合の解説ができたことは、僕にとって一生の思い出となったのである。

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著者プロフィール

  • 後藤健生

    後藤健生 (ごとう・たけお)

    1952年、東京都生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。1964年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、1974年西ドイツW杯以来ワールドカップはすべて現地観戦。カタール大会では29試合を観戦した。2025年、生涯観戦試合数は7500試合を超えた。主な著書に『日本サッカー史――日本代表の90年』(2007年、双葉社)、『国立競技場の100年――明治神宮外苑から見る日本の近代スポーツ』(2013年、ミネルヴァ書房)、『森保ジャパン 世界で勝つための条件―日本代表監督論』(2019年、NHK出版新書)など。

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