プレミアリーグに歴史あり ユナイテッドとシティ マンチェスターのふたつのクラブの長いライバル史
連載第34回
サッカー観戦7000試合超! 後藤健生の「来た、観た、蹴った」
なんと現場観戦7000試合を超えるサッカージャーナリストの後藤健生氏が、豊富な取材経験からサッカーの歴史、文化、エピソードを綴ります。
今回は、前回に続きイングランド・マンチェスターのふたつのクラブ、マンチェスター・ユナイテッドとマンチェスター・シティの、黄金期と低迷期が交錯する長い歴史を振り返ります。
昨季までは長い黄金期を作り上げていたマンチェスター・シティ photo by Getty Imagesこの記事に関連する写真を見る
【日本のファンにも鮮烈なユナイテッドの黄金期】
1966-67シーズンにフットボールリーグ(FL)1部で優勝し、翌シーズンはチャンピオンズカップを制覇したマンチェスター・ユナイテッドだったが、その後は低迷が続き、国内リーグのタイトルを奪還するには四半世紀もの長い時間を必要とした。それは、プレミアリーグが発足して初めての1992-93シーズン。サー・アレックス・ファーガソンが監督に就任して7シーズン目のことだった。
かつて、ユナイテッドがチャンピオンズカップで優勝した1968年に放映が始まった『三菱ダイヤモンドサッカー』はその後も続いていたが、日本ではこの番組以外で欧州サッカーを見られる機会はほとんどないままだった。そこで、僕は欧州で販売されているVHSのビデオを購入して"飢え"を癒していたのだが、欧州のビデオはPAL方式だったので、いちいちそれを日本で使われているNTSC方式に変換しなければならなかった。
しかし、1984年にはNHKが放送衛星を使ったBSを開始。その後、通信衛星によるCSも普及していく。そして、1993年のJリーグ発足によってサッカー人気が高まったこともあって、次第に日本でも欧州の試合が簡単に見られるようになっていった。
この日本に欧州の試合映像が大量に流入するようになった1990年代に、ユナイテッドはプレミアリーグで6度の優勝、チャンピオンズリーグ(CL)も1回制した。日本のサッカーファンは再び「強いユナイテッド」と出会ったのだ。
そして、かつて1960年代のユナイテッドにデニス・ローやジョージ・ベストがいたように、1990年代のユナイテッドにはデビッド・ベッカムという若きスターが現れ、その名はサッカーファン以外にも浸透していった。
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著者プロフィール
後藤健生 (ごとう・たけお)
1952年、東京都生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。1964年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、1974年西ドイツW杯以来ワールドカップはすべて現地観戦。カタール大会では29試合を観戦した。2022年12月に生涯観戦試合数は7000試合を超えた。主な著書に『日本サッカー史――日本代表の90年』(2007年、双葉社)、『国立競技場の100年――明治神宮外苑から見る日本の近代スポーツ』(2013年、ミネルヴァ書房)、『森保ジャパン 世界で勝つための条件―日本代表監督論』(2019年、NHK出版新書)など。