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三笘薫、アタッカーとしての総合能力の高さを証明 1ゴール1アシストでマンUを撃破 (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki

【ブライトンを救ったゴール】

 三笘の特異性は開始5分、ミンテがマークした先制点のシーンでも露わになった。カルロス・バレバ(カメルーン代表)が最後尾付近でファン・ヘッケからボールを受けた瞬間、三笘は走った。マズラウィの裏を取り、バレバからの縦パスを受け、ワントラップでマズラウィを置き去りにすると、GKオナナと1対1になった。

 普通ならここで打つ。そこでもし外しても仲間から糾弾されそうもない、三笘こそが蹴り込むにふさわしい選手だった。ところが三笘は打たなかった。隣を走るミンテに横パスを送った。得点をプレゼントしたのだ。

 日本人プレミア最多ゴールは、この時、達成されてもまったくおかしくなかった。奥ゆかしいというか、お人好しというか、自己顕示欲が驚くほど低い選手であることを証明したシーンである。いつ何時も顔色ひとつ変えず、飄々とプレーする彼らしいプレーになるが、オールドトラッフォードを埋めたホームのファンをいたぶるような、余裕綽々のアシストプレーとも言ってもよかった。

 ブライトンは先制点を奪ったあとがいけなかった。名門のホームチームをリスペクトしすぎたのか、後ろで守ろうとした。前節で勝利を収めるまで、8試合連続白星から遠ざかっていた理由を見るようだった。ロベルト・デ・ゼルビが監督を務めた昨季までなら、先制点を奪っても追加点を狙い、厚かましく前に出ていった。攻撃的な姿勢を徹頭徹尾貫いたものだが、ハーツラー監督は悪い意味で常識的だ。格上相手に敬意を払うような消極的なサッカーに出た。

 すると前半23分、バレバが相手の1トップ、ジョシュア・ザークツィー(オランダ代表)相手にPKを献上。同点とされる姿に、ブライトンの今季の弱みを見るようだった。

 そんな好ましくない流れのなかで、三笘の決勝弾は生まれた。ブライトンを救う、まさに価値あるゴールと言えた。 

 1ゴール1アシスト。採点すれば10点満点で7点台後半は出したくなる活躍だった。しかし、マン・オブ・ザ・マッチかと言えば、微妙なところだが、同じく1ゴール1アシストをマークしたミンテのほうが、わずかに勝るとみた。ウイングプレーヤーとして比較したとき、ミンテは三笘に勝っていた。

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