検索

なぜプレミアリーグ王者のマンチェスター・シティは勝てなくなった? グアルディオラ戦術の終焉か (2ページ目)

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji

【シティのボール保持に対する守り方が周知されている】

 シティのサッカーは一貫していて、ボール支配によってゲームを支配するスタイルだ。

 ところが、対戦相手の変化によって、ボール支配がゲーム支配に直結しにくくなった。さらにボール支配そのものが危ぶまれるようになった。

 ボール支配の効力に疑問符がついた試合として、CL第4節のスポルティング戦が挙げられる。

 スポルティングは本来、シティと似たプレースタイルだが、この試合に関しては撤退戦に徹していた。5バックの前に2ボランチ、2シャドー、1トップの5人が五角形を形成するように配置されていた。しかし、このやり方はさほど効果的ではなかった。わずか4分でフィル・フォーデンが先制。その後も何度もゾーンの五角形の中へ進入されている。なかなかボールを奪えないスポルティングは、自陣から身動きがとれなくなっていた。

 ただ、シティはあまりにも押し込めるので攻撃時のDFの位置がハーフウェイラインを越えて敵陣の半分ほどまで上がっていて、38分にはカウンター一発でヴィクトル・ギェケレシュに同点弾を食らう。裏をとられた時点でまだ相手がハーフウェイラインを越えていない(=オフサイドにならない)という事態は、ギェケレシュのような推進力のあるFWを相手にした場合に極めてリスキーと言える。

 しかし、これ自体はシティが自らのプレースタイルを貫く以上、つきまとうリスクであり、想定内のコストと考えられる。問題は後半だった。

 後半開始から4分間に2失点。守備の脆弱性については後述するとして、戦術的な問題点は2点をリードされた後に表われている。スポルティングは守り方を変えた。5バックの前に置いたゾーンの五角形を解体し、シティのMFをマンツーマンで抑え込みにかかる。すると、シティはボールを保持していても崩せなくなっていった。

 スポルティングはシティの手の内をよく知っている。自分たちも同じプレースタイルだからだ。最初の守備はうまくいかなかったが、後半の修正は効果的だった。この試合を最後にマンチェスター・ユナイテッドの監督に就任したルベン・アモリム監督は、少なくとも2種類の守り方を用意していたわけで、シティのボール保持に対してどう守るかはすでにいくつかの対策が周知されている現状を示唆していたと言える。

2 / 4

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る