浦和レッズSB・荻原拓也のクロアチア奮闘記「足はボロボロ。ピッチはデコボコ。シャワーも浴びられない」 (5ページ目)

  • 原田大輔●取材・文 text by Harada Daisuke

【孤独な環境が荻原をたくましくさせた】

 荻原が言う。

「シーズンが終わっても、契約期間はまだ半年あると思って腹をくくって、とにかく毎日、自分にできることを100パーセント、120パーセントを出しきるマインドに全振りすることができました。

 そこは日本でプロとして、5年間過ごしてきた経験があったから。クロアチアにいても、その姿勢がブレることはなかったし、むしろ自分と対話する時間が長いからか、余計に整理できすぎていたくらいです。

 今までならば、たとえば焦りや苛立ちといった負の感情を爆発させて、パフォーマンスにつなげていたのに、それすら整理できるようになっていた。一瞬、その爆発力がなくなっちゃったのかなって、悲しくなった時もあったけど、試合に出られなくても焦らず、日々練習に全力で取り組んでいる自分がいました」

 チームには「兄みたいな存在」と語る金子拓郎や「本当に支えになっている」と話す通訳もいたが、自炊もしていたように、基本的には孤独だった。日本以上に自立せざるを得なかった環境が、彼をたくましくさせたのだろう。

 姿勢がぶれなかった荻原は、第33節のHNKリエカ戦で途中出場すると、決勝点をアシストする。その結果は、チームをリーグ7連覇へと導く、大きな勝利になった。

(後編につづく)

◆荻原拓也・後編>>「森保監督に申し訳ない」 左SBが本職じゃない選手を起用に「情けない」


【profile】
荻原拓也(おぎわら・たくや)
1999年11月23日生まれ、埼玉県川越市出身。浦和レッズのジュニアユースから育成組織でプレーし、2018年にトップチームに入団。2020年8月〜はアルビレックス新潟、2021年〜2022年は京都サンガF.C.に期限付き移籍で経験を積み、2023年に浦和復帰後も左サイドバックのスペシャリストとして活躍。2024年1月から期限付き移籍でクロアチアのディナモ・ザグレブでプレーしている。日本代表歴はU-18、U-19、U-20を経験。ポジション=DF。身長175cm、体重73kg。

プロフィール

  • 原田大輔

    原田大輔 (はらだ・だいすけ)

    スポーツライター。1977年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌『ワールドサッカーグラフィック』の編集長を務めたのち独立。Jリーグを中心に取材し、各クラブのオフィシャルメディアにも寄稿している。主な著書に『愛されて、勝つ 川崎フロンターレ「365日まちクラブ」の作り方』(小学館クリエイティブ)など。

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